女子はスピードのあるバーレーン勢、暑さに強い北朝鮮勢
女子の顔ぶれを見ると、タイム的にはバーレーン2人が突出して速い。E.C.P.チュンバ(30)は自己記録が2時間20分02秒と参加選手中一番で、D.J.モコニン(26)も2時間20分47秒を持つ。チュンバはハーフマラソンでも1時間06分11秒のスピードがある。
チュンバは昨年の世界陸上オレゴンで7位に入賞。世界大会の実績も一番で、金メダル候補筆頭と言っていい。だがモコニンも、酷暑の中で行われた19年世界陸上ドーハ大会で12位に入っている。暑くなれば優勝のチャンスが出てくるだろう。
自己記録は低いが、北朝鮮の2人も世界陸上ドーハで好成績を残している。自己記録は2時間28分06秒しかないキム ジヒョン(28)が、ドーハでは8位に入賞。2時間26分58秒のリ グァンオク(27)も14位だった。
それに対して中国2人は今年の世界陸上ブダペストの成績が良くなかった。3月の名古屋ウィメンズで4位(自己新の2時間24分05秒)と健闘した張徳順(27)は、ブダペストでは48位。名古屋ウィメンズ8位の李芷萱(29)は世界陸上では32位と奮わなかった。
だが中国勢は、世界陸上は抑えた調整で臨み、地元開催のアジア大会にピークを合わせている可能性もある。張徳順は昨年の世界陸上オレゴンでは11位に入った。
バーレーン、北朝鮮、中国と、各国に実績ある選手がいる。大西ひかり(23、JP日本郵政グループ)と和久夢来(28、ユニバーサルエンターテインメント)の日本勢がメダルを取るのは、簡単ではないだろう。
だが3回目のマラソンとなる大西も、「良い準備ができた」とJP日本郵政グループの高橋昌彦監督は言う。
「新しい給水もして、暑い条件の中で練習してきて、安定感が出てきましたね。年間を通じて距離を一番走る選手で、性格的にも細かいところを気にしない。アジア大会の代表になれたのは、(辞退者も出て)ラッキーなところもありました。ラッキーでもそれをモチベーションにして、結果を出したら競技人生が変わります。28年のロサンゼルス五輪代表につなげてほしい選手です」
高橋監督は小出義雄氏(故人)のもとでコーチをしていたときに、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さん(TBSキャスター)のサポートに携わった。高橋さんが3
回目のマラソンとなった98年バンコク・アジア大会を独走し、大幅に日本記録を更新して金メダルを取ったことが強く印象に残っている。
高橋さんと同じことはできなくても、杭州に集った選手たちにはアジア大会を、考え方、行動を変えるきっかけにして欲しい。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)