アジア大会でラスト勝負を
大八木総監督がアジア大会出場の2人に望むのは、「アジアトップの外国勢にラスト勝負を挑むこと」だ。
長い年月をかけて推し進めてきたスピード化だが、2つに分類できる。1つは中間走のスピード化で、田澤の場合、「最低でも(400mトラック1周)64~65秒で進むペースに、余裕を持って行けるようなトレーニングをする」ことを目標としている。
65秒平均で走り切れば27分05秒00になり、日本記録の27分18秒75を大きく上回る。しかし最低でも26分台の記録を持っておかないと、世界で勝負することはできない。今年3月に田澤が米国で世界陸上標準記録(27分10秒00)に挑んだが、27分28秒04だった(セカンド記録日本最高ではあった)。
「7000~8000mまではそのペースで行けました。そこから落ちなければ27分10秒は切れると思います」
佐藤についても「つねに日本記録(13分08秒40)を切るところから考えないと、世界では戦えない」と、練習のタイムも設定している。
そうした高いレベルの記録は、中間走を速いペースで走るだけでなく、最後の1~2周を今より数秒縮められれば出しやすい。そしてラストのスピードを上げることは、世界大会で予選を通過したり、入賞圏内に入るときに極めて重要になる。そのラストのスピードを研くための練習が、海外クラブのメニューを取り入れることで、より高いレベルで行うことができるようになった。
アジア大会は気象条件的にハイペースとなることは考えにくい。ラスト勝負で少しでも上の順位に食い込むことが求められる。
田澤も佐藤も、歴代の駒大トップランナーでラストが速かった選手に比べ、ラストだけを比べればものすごく速い選手ではない。だが「トータルの力は(それぞれの種目で)2人とも一番ある」と大八木総監督。
「(最近のスピード練習が)少しずつ生きてきています。田澤はブダペストでラスト100mを13秒くらいで走りました。佐藤もラストのスピードが、少しずつ上がってきています。2人ともアジア大会のラストに生かしてほしい。最後800m(2周)の上がりが大事になりそうです」
アフリカ勢を中心とする外国勢に、日本選手が終盤で置いて行かれる。国際大会長距離種目で繰り返されてきた光景に、杭州では変化が起きるかもしれない。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)