家族へのカミングアウト 受け入れてくれた母と涙の理由

小川キャスター:
そうですよね。常に一緒に仕事の場で、例えば一般の方だったら、職場の同僚とか、そういった場所のサポートっていうのは大事だなというふうに思います。今、一緒にいる時間が長ければ長いほど、というふうにおっしゃっていましたけれども、そうなるとやはり家族の皆さんですよね。ご家族にお伝えになる時というのは與さん、どんな葛藤がありましたか。

與さん:
本当に…もう、絶対(カミングアウト)したくないっていうぐらいの、本当にずっとしたい思いもあったんですけれど、なかなかやっぱり言えなくて。言えたのも2年半前ぐらいなんですけれど。最近なんですよ、もう本当に。

まず、お母さんに言って。自分がLAにいる時に…今、思えば直接言ったらよかったなっていうちょっと後悔はあるんですけれど、その時は本当にもうドキドキでなかなか勇気が出なくて。僕がLAにいる時に電話でちょっと伝えさせてもらったんですけれど、母親に言った時は受け入れてくれました。自分がゲイっていうことは「全然もうそんな気にせんでいいし、早く言ってくれればよかったのに」って言ってもらって。それで僕はもうすごく…なかなか泣くタイプじゃなかったんですけれど、すごく泣いちゃって、あっちも泣いて。

当初公表に反対した母 バッシングへの懸念が親子の溝に

與さん:
そこからお姉ちゃん、お兄ちゃんにも言って、すごく受け入れてくれて、すごく前向きに考えてくれたんですけれど。自分がやっぱり世間に公表するって母親に言った時は、やっぱり「いや、しない方がいいと思う」って。そこは初めてちょっと喧嘩じゃないですけれど、1回ちょっと離れてしまいました。

今、思うと多分、母親は「自分の息子がバッシングされたら嫌だ」「どうしたらいい」「自分の息子がそのバッシングに耐えられるか」とかもあったと思うんですよ、絶対に。

でも、その時は自分がやりたいことを何か否定されたような気がして、そこで衝突はありました。何か月も話してなかったですし。でも、僕はもう絶対にやるって決めていたので。自分の人生、人の意見…いくら家族とはいえ、自分は悪いことをしていないっていうことが常に頭にあったので、絶対にいつかやるっていうように。だから、最初は話せてなかったんですけれど、徐々に徐々にお互い分かりあって。自分の母親もいろんなものを見てくれて、本やインターネットでLGBTQ+ってどういうことなんだろうとかっていうのを彼女なりにすごい勉強してくれて、お互いがどんどん歩み寄ったっていう感じで。だから結構いろんなドラマはありました。

LAからの母への電話「実はゲイなんだよね」 カミングアウトを支えた友人たち

小川キャスター:
お母様にお伝えになった時に、受け入れてもらえた。それはどういう言葉でお伝えになったんですか。

與さん:
その時は友達が横にいてくれて。LAに来た当初ぐらいから仲良くさせてもらってた、本当に信頼できる友達が、みんなが「大丈夫だから」ってすごい背中をさすってくれて電話して。「ずっと言いたいことがあったけど、なかなか言えないことがあって、ちょっと今言ってもいい?」みたいな感じで。「実はゲイなんだよね」って。もう緊張してたのであんまり細かい内容は覚えてないんですけれど。サラっと言った気はします。その時は全然すぐ何か「もうそんなんなんか考えんでもいいよ」って。本当に思った返事と全然違ったので、それはそれでびっくりしました。

小川キャスター:
気にしないでいいよってお母様の反応があった時は、どんな気持ちになられましたか。

與さん:
もうその時、号泣しすぎて(笑)。ぶっちゃけ、その時はもっと早く言えばよかったなって正直思いました。けど、今、思うとそうなんですけれど、やっぱり言えないんですよね。もう言いづらいんですよ。もうとにかく言いづらい。

「言いづらい」 子ども時代、バラエティのネタだったLGBTQ

小川キャスター:
その言いづらいっていうのはどうしてなんでしょう?

與さん:
やっぱりそれは、昔一緒にテレビを見てた時とかに、バラエティーとかで芸人さんとかが「男同士、気持ち悪い」とかっていうのを見て、やっぱりみんなが笑うっていうところとかが僕はずっと頭の中にあって。何か、男同士のシーンがあると「え?!」みたいなこともやっぱりあったし、そういうことも。でも、それってやっぱり自分の母親も何も学ぶ環境もなかったし、それを知ることさえ。LGBTQ+なんて、本当に最近じゃないですか。その言葉がやっと浸透したのって。だから昔、本当に20年前、20年以上前とかはもうその言葉もなかったので、世界的にも。だからその時の記憶がずっと残ってたんですよね、やっぱり。だから、それがすごい言いづらかったかなと思います。

「愛してる家族が自分を嫌ってしまうんじゃないか」

小川キャスター:
それは、拒絶されてしまうんじゃないかという怖さですか。それとも何か動揺させてしまうとか、どういう怖さなんでしょうか?

與さん:
それはやっぱり愛している家族が、自分を嫌ってしまうんじゃないかって、それはもうずっと思ってました。母親が本当にシングルマザー的な感じですごく愛をくれたので。母親も「真(司郎)の子ども見たいな」とか、「いつ結婚するのかな」とか。全然悪気がないことをやっぱり言われる度に「ああ、そうだよな」って。っていうのは、やっぱりそういう小さいことでも言いづらくなっちゃうんです。でも、それって本当に母親を責めたくなくて。みんなだって知らないからしょうがない。

だから、LGBTQ+のことを理解できてない人たちがいるのも当たり前なことなんですよね。だからもっといろんな人が「こういうことなんですよ」っていうことを、もっともっと発信できる環境がもっとアジアにもできたらいいなって、心の底から思ってます。