ライバルはアフリカ出身選手たち、インド勢も不気味な存在

初日の10000mのライバルは絞られる。自己記録で見れば30分台はC.C.キプキルイ(29、カザフスタン)と廣中だけ。31分台はB.E.レビトゥ(25、バーレーン)1人である。キプキルイはケニアから、レビトゥはエチオピアから国籍を変更した選手だ。

キプキルイは昨年の世界陸上オレゴンでは7位に入賞し、自己記録もオレゴンで30分17秒64を出した。廣中より20秒以上速い。だが今季のキプキルイは7月のアジア選手権、8月の世界陸上ブダペストとも10000mは途中棄権している。故障の影響だった可能性もあるだろう。レビトゥは31分40秒02、5000mも15分02秒22と、2種目で今季自己記録を更新している。勢いは侮れない。

廣中は並走しながら、キプキルイがどこまで復調しているかを、レビトゥはどこまで強くなっているかを、観察することになる。そしてブダペストで自信を深めたラスト勝負に持ち込むのか、以前のように自身がハイペースに持ち込むのかを決めていく。

展開が読めないのが5000mの方である。14分27秒55を持つキプキルイと、14分45秒69を持つD.ジェプケメイ(27)のカザフスタン2人が、14分52秒84の廣中を自己記録で上回る。キプキルイは前述のように不調のシーズンだが、5000mはアジア選手権で4位に入っている。

ジェプケメイもケニアから国籍を変更した選手。今季は3000m障害中心にレースに出場しているが、昨年は自己新を含め14分台を2度マーク。19年のコンチネンタルツアー・ベルリン大会では、ラスト勝負で競り勝っている。かなりの強敵と見るべきだろう。レビトゥは前述のように今シーズン、15分02秒22の自己新と好調だ。

T.G.メコネン(26、バーレーン)もエチオピアからの国籍変更選手だが、3000m障害を主戦場としている。16年世界ジュニア3000m障害で2位と、U20世代では世界トップレベルだったが、5000mの自己記録は登録されていない。そしてP.チャウドハリ(28、インド)も今季、15分10秒35と自己新と好調の選手。過去のインド長距離選手は、ラストスパートに強い選手が多かった。

個々の選手の得意とするレースパターンを、知識として仕入れるのは不可能だ。10000mと同様、走りながら判断するしかないが、今の廣中はそれができるようになっているはずだ。両種目で廣中が、レースをどうコントロールするかに注目したい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)