廣中璃梨佳(22、JP日本郵政グループ)が2種目でアジア女王の座に挑戦する。9月29日から10月5日に行われるアジア大会陸上競技(中国・杭州)。女子トラック種目期待の一番手は10000mに登場する廣中だろう。8月の世界陸上ブダペストでは7位に入賞。初日の10000mで勝って勢いをつけ、5日目(10月3日)の5000mでもメダルを狙う。

ブダペストの7位入賞でラスト勝負にも大きな自信

廣中は世界陸上ブダペストで、これまでとは違った走りを見せた。5000m通過が16分24秒35というスローペースで、以前の廣中なら間違いなく先頭に出ていた。だがブダペストでは前に出ず、得意とは言えなかったラスト勝負に挑んだ。

残り1周では9位だったが、ラストの直線で2人を抜き7位に入賞した。31分35秒12と自己記録より1分近く遅かったが、後半5000mは15分10秒77までペースアップ。最後の400mは65秒79でカバー。10000mのラストでは自己最速だった。

「今回はラスト勝負をするんだ、と自分の中で強く決めていました。どんなラストスパートをかけられるかに挑戦できたと思います」

ブダペスト入りする前に、サンモリッツ(スイスの高地練習拠点)で約3週間トレーニングを積んだ。高橋昌彦監督は「400+300+200+100などで、中距離的なスピードを入れた」という。ブダペストから帰国後は1週間ほど休養し、9月4日から20日までボルダー(米国の高地練習拠点)でアジア大会に向けて準備をした。高橋監督が練習内容を説明してくれた。

「世界陸上前が神がかっていた練習でした。今回はそこまではできませんでしたが、やれることはやったと思います。廣中はある程度の練習ができていれば、レースで力を発揮できる選手です」

東京五輪10000m代表を決めた21年5月の日本選手権も、3位狙いで臨んだが優勝することができた。東京五輪も7位入賞と、想定以上の結果を残した。

東京五輪はどの選手が強いのか、どんなレースパターンを得意とするかも知らず、自身の勢いだけで結果を出した。それに対してブダペストは、「みんな1500mや5000mもやっているから強い。(2年前は知らなかった)そういったことも知った上で最後まで勝負をする。それをつねに頭に置いてやってきた」と言う。その結果で東京五輪と同じ7位。廣中のレースパターンが増えた結果だった。