「学校に行ったら30秒でしんどく」→救急車で病院へ

岡山市に住む高校1年生のBさん。

中学時代はバスケットボールに打ち込む、活発な生徒だった。

しかし、中学2年生だった2022年1月、コロナに感染。その後、後遺症と疑われる多くの症状が現れた。

息切れや動悸、けん怠感が襲い、一人で立ち上がることすらできなくなった。

さらに頭に霧がかかる“ぼーっとする”ような感覚や、記憶力が低下する、いわゆる“ブレインフォグ”に苦しめられた。

Bさん
「(2022年)2月に一回学校に行ったら、30分もしないぐらいでまたしんどくなってしまって、救急車で病院まで行って…」
「人の名前が出てこなかったり、顔はわかるけど、あれ?みたいなのがあったり」

複数の病院を受診したが、けん怠感や記憶力低下がコロナと関係しているかどうか分からず、専門外来のある岡山大病院でようやく「コロナ後遺症」と診断された。

岡山大病院 大塚文男教授
「デルタ株のときは嗅覚・味覚障害といったにおいとか味が分からない、料理が美味しくない、作れないといった悩みが多かったのですが、オミクロン株になってからは減ってきて、反対に、けん怠感、疲れやすいとか、それに基づいた頭痛とか、睡眠障害、不眠症、こういった症状がぐっと増えてきた」

大塚教授によると、後遺症は人それぞれ症状が異なり、症状の重さも違うため、診断には時間がかかり、適切な治療になかなかたどり着けないという。

自転車で通学できるまでに 一方、言葉が出なくなることも

Bさんがこの日、リハビリのため病院を訪れた。

課題は、一度記憶した図形を再現すること。後遺症で記憶力が低下した脳の働きを回復するためのものだ。この病院では、後遺症の患者すべてにこのリハビリが行われている。

最初はスムーズにペンが進んだが、次第に手が止まる。

Bさん
「もう覚えていないです」

しかし、リハビリを始めた時よりは、改善していた。

左は、2022年10月のもの、右が2023年5月のもの。大きな差がある。

言語聴覚士
「聞いたり見たりして、頭の中で処理をする力というのは、前に比べるとだいぶ良くなっていると思う」

後遺症に苦しんできたこの間。高校受験の際には中学の先生の支えがあった。

Bさん
「(勉強が)全然できなかったんです」

起き上がることができないBさんに、自宅を訪れた先生が床にノートを広げて勉強を教えてくれたという。

Bさん
「(先生が)すごく考えてくれて、受験には間に合いました」

そして2023年4月、高校に無事進学したBさん。今では自転車で通えるほどにまで回復したが、最近でも言葉が出なくなることがある。

取材の最後、後遺症に苦しむ人たちへのメッセージを尋ねた時だった…

母親
「希望を持って、諦めないことだよね、最後まで」
Bさん
「諦めずに…なんだっけ?もう一回言って」
母親
「信じて諦めないでやっていったら良くなってきたので、みんなもいっしょに頑張っていきましょう」
Bさん
「信じて頑張ってやっていったら?」
母親
「大丈夫?まずはリラックスして。まずは(自分が)良くなるってことを信じないといけないよね、自分がね…」

Bさんの後遺症の治療は今後も続く。