うまくいかなかった仕事、生活
質問に、はっきりとした声で回答していた男性だったが、自身の生活態度に踏み込まれると、言葉に詰まり始める。
「仕事に就いても、飽きて辞めちゃうよね、どうして?」
「待遇面や人間関係で…」
男性はこれまで、清掃業をはじめ様々な仕事に就くなど、自立に向け努力を重ねてきたものの、いずれも長く続けることが難しかったという。
「香川の実家には帰らないのか?」
「帰らない、愛媛にいる」
これまで義母とふたりで暮らしてきたという男性の家庭環境や、家出して愛媛に流れ着いた理由など、詳しい経緯が裁判で明かされることはなかった。
「被害者に対してはどう思う?」
「誠に申し訳ない」
裁判は即日結審し、検察側は罰金30万円を求刑。
一方の弁護側は、店にパンの代金140円を支払った上、これとは別に1万円の弁償金も支払い示談が成立しているとして、執行猶予付きの判決を求めた。