「今日からあなたは社会に復帰します」

5月11日。男性には求刑通り、罰金30万円の判決が言い渡された。

「あなたは現時点で、既に罰金30万円を支払ったこととします」

渡邉一昭裁判官は、判決理由について、被害店舗への弁償が済んでいて示談も成立していること、また犯行当時、男性の所持金が数十円しかなかった事情を挙げた上で「空腹ゆえの犯行で酌量の余地がある」と述べた。

また、身柄が勾留されていた期間を、1日当たり5000円に換算し、罰金に充当したことを説明した。

「新たに罰金を払う必要はありません。今日からあなたは社会に復帰することになります」

裁判官を見つめたまま、身じろぎせず、判決に聞き入る男性。

十分に理解できない様子を、見て取ったのだろうか、裁判官が再度、繰り返す。

「いいですか?新たに罰金を払う必要はありませんよ。あなたはもう払ったことになります」
「社会に戻ったら更生緊急保護の手続きを、しっかりと行ってくださいね」

裁判官からの“説諭”に、男性はしっかりうなずいた。