”ライバル不在”の間にアメリカが…

インドが国を挙げて開催したG20サミットが10日閉幕した。

ニューデリーの街には、モディ首相の顔写真入りのサミットの看板が、至る所に設置され、テレビをつけると、朝から晩までG20の特別番組が放送されるなど、まさにお祭り騒ぎだった。

今回のG20サミットは、プーチン大統領と習近平国家主席が欠席したことで、インド以外のメディアにとっては盛り上がりに欠けるものとなったが、「ライバル不在」の間に存在感を見せたのがアメリカだった。

G20の場を借りて、バイデン大統領は、インド・サウジアラビア・UAE・欧州連合の首脳らとともに「インド・中東・欧州の経済回廊プロジェクト」を発表。

インドでは翌日の新聞の一面にG20の会議ではなく、このプロジェクトの署名式の写真が掲載されるなど注目を集めた。

地元紙は一面に経済回廊プロジェクトの写真を掲載

ゲームチェンジャーになる可能性も

発表された経済回廊プロジェクトは、インドからアラビア海をわたって、UAE・サウジアラビア・ヨルダン・イスラエルを通り、地中海をわたってヨーロッパを結ぶ一大インフラ構想だ。

参加する中東の国々には、それぞれ鉄道が敷かれているが、空白地になっている部分の鉄道を整備するとともに、新たに水素パイプラインや海底ケーブルを設置し、物・クリーンエネルギー・データの流通を促進するという。

整備されれば、スエズ運河を通らずに、アジアと欧州を結ぶ貿易の動脈がつながることになる。

米ジョージ・ワシントン大学のディーパ・オラパリー教授(インド政治)は「経済回廊構想はインド・欧州間の輸送時間を40%短縮し、中国の『一帯一路』構想への対抗策となる可能性がある。ゲームチェンジャーになるかもしれない」と期待を示す。

今回のプロジェクトは、バイデン大統領が去年のG7サミットで発表した「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の枠組みで打ち出されたものだ。

PGIIは、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗を念頭に作られたもので、「より透明性の高い、持続可能なインフラ整備プロジェクトを世界で進めていく」とアメリカ政府はアピールする。

経済回廊プロジェクトには、イタリアも名を連ねたが、そのイタリアは今回のサミットの場で中国に対して「一帯一路」からの離脱を伝えたと報じられた。中国に接近しつつあったイタリアをアメリカが引き戻した格好だ。

テレビは経済回廊プロジェクトを時間を割いて報道していた