ウクライナへの侵攻が長期化する中、徴兵年齢の上限を引き上げるなど兵士確保への動きを強めるプーチン政権。去年9月に続く部分動員令の発動はあるのでしょうか。そして、それはどのように行われるのでしょうか。また、友好国の国民を兵士として調達しようとしているのは、なぜなのでしょうか。「来年春に大規模な追加動員の可能性がある」と指摘するロシアの専門家に、動員を巡るプーチン氏の本音を聞きました。

ミハイル・コーミン氏
「クレムリンは様々な手段を使って追加の動員を先延ばししようとし、そのために様々な工夫をしています」
こう話すのは、ロシアの政治研究者ミハイル・コーミン氏。戦争に反対しロシアから脱出、今はオーストリアにいます。先延ばしの理由は、来年3月の大統領選挙への配慮。そのために行っている様々な工夫というのは…

ミハイル・コーミン氏
「例えば、他国の人を契約軍人として募集しようとしています。直近ではキューバが話題になりました。キューバはロシアから遠いのに、大統領選を控えるクレムリンは社会への影響を懸念し、新たな動員を避けようとするあまり、ロシア国籍の取得や高給などと引き換えにいたるところで兵士を募集しようとしています」

キューバの外務省は、4日、ロシアの人身売買組織を摘発したと発表。この組織はキューバ人をウクライナへと送り込んでいたとされ、見返りにロシア国籍の取得が約束されていたとの報道もあります。
そして、プーチン政権が先送りをしたがっている追加の動員の可能性については…

ミハイル・コーミン氏
「クレムリンが追加の動員を行うとしたら、9月の地方選挙の後、さらに動員による社会への影響を克服するために、大統領選のかなり前に行うことが重要です。動員される人数についてですが、クレムリンにとって社会への重大な影響を避ける唯一の方法は、前回動員された30万人を交代させるために新たに30万人を動員すると宣言することだと思います。ショイグ国防相がプーチンのもとを訪れ、『去年の9月に動員された男性のお母さんたちは休暇を求めているので、その30万人を交代させるために追加の動員をしましょう』と提案する流れになると思います」
その一方で、コーミン氏は、来年3月の大統領選を前にプーチン氏は、容易には追加動員に踏み切れないだろうとも指摘。可能性が高いのは、大統領選の後だと話します。
ミハイル・コーミン氏
「大統領選の翌日ではないとしても、例えば4月から新たな動員が始まる可能性があります。30万人ではなく50万人のようなより規模の大きい動員になると思っています」
兵士不足に悩むロシア。プーチン政権は徴兵に関する法改正も行いました。

ロシアでは現在、18歳から27歳までの男性は1年間の徴兵義務が課されていて、その期間中は戦地には送られないことになっています。しかし、法律が改正され、来年1月から徴兵後1か月で戦地に送る契約ができるようになりました。
ミハイル・コーミン氏
「例えば、10月に秋の徴兵が始まったとします。来年1月の時点で2か月経過しますので、説得に応じて契約兵になる人が出てくるでしょう」
毎年、春と秋、一度に10万人以上を対象に徴兵は行われ、この秋も、来月から年末まで予定されています。コーエン氏は、その中から、戦地へ送られる契約兵が出てくるだろうと言います。
ミハイル・コーミン氏
「徴兵された人の中から契約兵になるのは3割から4割が限界だと思います」
(BS-TBS『報道1930』9月7日放送より)