反攻開始から3か月で強固な防衛線の突破したウクライナ軍。ザポリージャ州のロボティネを奪還し、ロシア軍の重要拠点トクマクの攻略が視野に入ってきました。一方、「戦術的な撤退」に追い込まれたロシア軍も南部戦線を支えるために新たな動きを見せています。ここからの戦いは、どのような困難が待ち受けているのでしょうか。ウクライナの軍事専門家と最前線で戦う部隊に聞きました。

軍事アナリスト ゼルジニョフ氏
「現在はウクライナ軍の前線部隊はトクマクから23キロ離れた場所にいます」
ロシア軍の重要拠点トクマクから23キロ離れた地点に展開しているというウクライナ軍の前線部隊。ここまで15キロの防衛地帯を突破するのに3か月かかりましたが、トクマク奪還を目指す戦いについて、軍事アナリストのゼルジニョフ氏に聞くと…

軍事アナリスト ゼルジニョフ氏
「ロシア軍は防衛線を築くための時間と資源の60%を第1防衛線の構築に使い、第2と第3防衛線は各20%に過ぎないとウクライナ軍のタルナフスキー将軍が言っていますが、状況は変化しつつあると思います。今ここで話をしている時も、ロシア軍は塹壕を掘り続け、新たな地雷原を作って、防衛体制を強化していると思うのです。積極的な戦闘を続けることが出来るのはあと1か月ちょっとの間です。その後に雨が降り、泥濘期が始まるので、野原等で兵器の移動が出来なくなります。その短い期間で、ウクライナ軍が数10キロも先に進むとは思えません」
ゼルジニョフ氏は、更に大きな壁があると言います。最近、トクマク周辺に投入されたロシアのエリート部隊です。

軍事アナリスト ゼルジニョフ氏
「第76空挺師団はプスコフ空挺師団と呼ばれる最もエリートな部隊の一つです。このロシアのトップレベルの部隊は、ロボティネとトクマクの間に配備されました。また、つい最近までヘルソン州の南部にいた第7空挺襲撃師団の部隊もトクマク方面の防衛体制を強化するために同地域に移動しました。このような状況を考慮すると、ウクライナ軍はそのまま進軍できるとは限りません。トクマク奪還は非常に困難で、厳しい戦いになると思います」
困難を極めるというトクマクの奪還。ロシア軍の防衛戦を突破し、最前線で戦う部隊の兵士は何を思うのでしょうか。タブリヤ方面軍のシュトゥプン報道官です。

タブリヤ方面軍 シュトゥプン報道官
「どのような防衛体制でも突破することが可能です。そのために必要なのは時間と強い意思です。また、ロシア軍の防衛体制を破壊するためには多くの弾薬が必要です。簡単に先に進むことは出来ませんが、ウクライナ軍は困難を乗り越え、今最速で前進しています。トクマク、メリトポリなど国際的に認められた領土の一日も早い奪還。これこそがウクライナ人にとっての勝利なのです」
(BS-TBS『報道1930』9月7日放送より)