投資物件として転売…不動産会社「このビジネスは違法ではない」
実は今、こうした生活保護を利用する新手のビジネスが広まっている。

長年にわたり、貧困問題に取り組んでいる宇都宮健児弁護士が警鐘をならす。
反貧困ネットワーク理事長 宇都宮健児 弁護士
「コロナ禍以降、仕事を失ったり、あるいは収入が減ったりして住まいを失う人もたくさん出てきている。そういう生活困窮者の弱みにつけ込んで、『住まいを提供できます』『就労支援をします』というような誘い文句で勧誘して、郊外のアパートに入居させる。そのときの条件として生活保護を申請して受給させる」
空室が目立つ郊外のアパートを、生活保護受給者で満室にする。その際、生活保護で支給される上限まで家賃を引き上げるという。

宇都宮弁護士
「空いた部屋を満杯にして、利回りが良くなるということでアパート全体を転売して利益を上げる。そういうビジネスモデルっていうのが出てきている。これは従来なかったタイプの新しい貧困ビジネスだと思います」

実際に、ある不動産会社のホームページを見てみると、あの男性が入居していた福生市のアパートも「満室にして引き渡し」「利回り12.7%」「令和5年3月成約」と、高利回りの投資物件として掲載されており、男性が入居を斡旋された3月に、高利回りの投資物件として売却されていたことがわかった。
さらに、神奈川県相模原市にある築35年のアパートは、1部屋だけ家賃2万4000円と書かれているが、他の部屋は4万6000円~5万4000円と、およそ倍の金額。

調べてみると、相模原市の住宅扶助の上限は単身で4万1000円。2人暮らし世帯で4万9000円だった。福生市の物件と同様に、住宅扶助の上限に共益費5000円を合わせた額だ。
このアパートも、やはり転売されていた。その他、埼玉県郊外の築38年のアパートなど、高利回りの投資物件が複数販売されていた。
取材を進めると、この不動産会社からアパートを購入したオーナーのひとりと電話が繋がった。音声を使用しない条件で、オーナーが取材に応じた。

アパートのオーナー
「不動産会社の説明では、『社団法人に生活保護受給者の斡旋を依頼し、アパートを満室にしている。このビジネスは違法ではない』ということだった。相場では家賃2~3万の物件でも、生活保護受給者なら倍近い家賃に設定できる。社団法人がいくらでも困窮者を集めてくるので、常に満室を作れると思って購入した」