郊外のアパートを生活保護受給者で満室にし、投資物件として転売する新手のビジネス。その裏で免許証やマイナンバーカードなどを取られ、自立を阻まれたと訴える人が相次いでいます。コロナ禍で急増した生活困窮者。その支援現場で起きている異変を追いました。
免許証やキャッシュカードを取られ…困窮者のSOS「病院にかかれない」

「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作事務局長は、生活困窮者たちに駆け付け支援を行っている。
瀬戸 事務局長
「今、めちゃくちゃ相談多い」
コロナ禍から日常に戻りつつある今、実は寄せられる相談が増えているという。この日も、生活保護受給者の男性から助けを求める電話がかかってきた。

瀬戸事務局長「今日逃げちゃう?」
男性「はい、お願いしたいです」
瀬戸事務局長「もう直ぐ出られる状態?」
男性「はい」
アパートから直ぐに助け出してほしいと訴える男性。 困窮者支援を謳う社団法人に入居を斡旋されたという。「反貧困ネットワーク」の林治弁護士と男性のアパートに駆け付けた。

瀬戸事務局長「今日は、連中が来る可能性もあってビビってるんだよ」
林弁護士「あるのか。それはまずいな」
男性「瀬戸さんですか?はじめまして。すみません。助かります」
男性が早速、このアパートで起きている異変について話し始めた。

男性
「この間も月曜日に人が飛んだ(失踪した)んですけど、次の日にはもう新しい人を入居させ、その時に、ここ(ガスメーターの脇)から鍵を取り出して開けてました」
男性は大学卒業後、学習塾の講師などをしていたが、13年前に実家の借金が原因で自己破産。派遣の職場を転々としたが、やがて仕事も、住む場所も失った。
男性
「どうしようもなく路頭に迷ってて、インターネットで検索して…」
都内の社団法人の斡旋で今年3月、福生市のアパートに入居。社団法人側が手続きを行い、生活保護を受給するようになった。

しかし、築32年のこのアパートの家賃を調べると、2022年まで月3万円で入居者を募集していたことがわかった。
しかし、男性の契約書では生活保護の住宅扶助の上限5万3700円となっていた。共益費5000円も上乗せされている。さらに…

男性
「これが取られている通帳と身分証とマイナンバーのコピーなんですけど、これじゃ病院にかかれないんですよ。提出しなきゃならない紙なんだけど、ここにマイナンバーを書いてこいって。でもマイナンバーがないんで…」
免許証やキャッシュカードを社団法人に預けさせられ、就職活動や病院に行くことなど、様々な社会生活ができなくなった。
男性
「市役所で生活保護の面談に行ったときに、叱られたんです。『なんでそんな簡単に大事な身分証を預けてしまうんだ』と。そんな会社(社団法人)で大丈夫なのという意味を込めて言ってくれたんですよ」