「犯罪を犯すときに普通の状態の人はいない」…責任能力の考え方とは?

川崎拓也弁護士:やはり精神疾患があったのかどうかが一つのポイント。犯罪を犯すときに冷静沈着いわゆる普通の状態という人はいないのでそれは皆さん一緒。しかし責任能力に問題があるときというのはやはり精神疾患、例えば統合失調症であるとか、うつであるとか病名が付く疾患があって、それがどんな影響を与えたのかっていうところで責任能力の問題になるということになります。

――青葉被告の場合ですと、自身が大やけどを負ってしばらく治療に専念しなければならなかった。犯行から時間が経って精神鑑定を受けましたよね。時間が経っていても、当時の青葉被告の精神状態というのは正しくわかるものなんですか?

川崎拓也弁護士:そこは一つのポイントになる事件もあります。今回の事件がそうかどうかっていうのはちょっと中身を見てみないとわからないんですけども。精神鑑定というのはやはり一定、犯罪から時間経ってやることも多いので、少々時間が経っているから全て信用できないってことにはならない。そのときの状況を、例えばご家族、あるいはカルテ、いろんな状況から考えていくので、長く離れたから正しくできないということではないんですが、他方でやはり長く離れたことによって記憶が変わったり、減退したり、いろんなことがあるので、そこがポイントになってくるのかどうか、そこはもう鑑定医の先生のご意見次第かなと思います。

――検察側の精神鑑定と、弁護側が請求して裁判所が精神鑑定を行っているんですけれど、これはどういう違いなんでしょうか?

川崎拓也弁護士:これは裁判員裁判では一般的な手続きにはなるんですけれども、検察官というのは捜査の一環として起訴できるかどうかのために自ら鑑定医にお願いをする。ところが弁護側は、私的に鑑定をやろうと思えばできるんですけども、お医者さんがプライベートに会いに行ったとしても面会時間も制限されていますし、自由にMRI・CTが撮れるかというとやはりそうではない。ということになると、裁判所に鑑定の申し立てをして、裁判所に採用してもらい、裁判所が特定の精神科医の方を選んで鑑定命令を出す、これが一般的な流れです。