台風の発達は海面水温だけでは決まらない

台風12号の進路予想にあたる海域では海面水温が高い一方で、水深50mの水温を見てみると、沖縄周辺などと比べるとそこまで水温が高くない状況です。海から受け取るエネルギーが11号や9号の海域ほどは多くはないのかもしれません。

さらに台風の発達を妨げる条件としては以下のようなものがあります。

▶鉛直シアが大きい(=高度によって風の向きや強さの違いが大きい)
▶かなり上空(高度15km前後)に暖かい空気が存在する
▶台風自身の壁雲の入れ替わり

30日午後9時の高層天気図(上空9700m付近・上空5800m付近)です。台風12号の北側には、上層に寒気を伴った「上層寒冷低気圧」と呼ばれる低気圧があり、台風の進路に先行して西へと向かっていることがわかります。

この低気圧周辺の風によって台風12号周辺の風の流れが乱されることで、海面付近と上空との風の向きや強さの違いが生まれて、鉛直シアが大きくなります。

鉛直シアが大きくなると台風の下層から上層までの対称的な形を崩してしまい台風の渦が弱まることで発達が抑えれます。

この上層寒冷低気圧は、今後も台風12号が進むと予想される進路周辺で影響し続けるとみられます。

海面よりすぐ下の海水温度がそれほど高くないことや鉛直シアが大きくなっていることなどが、日本の南東方向から北上してくる台風がそれほど発達しないことに影響している可能性があります。

今回の台風12号は、さほど発達しないで日本に接近するといっても南の海上から暖かく湿った空気をもたらします。雨の降り方には注意がいるようになるかもしれないので油断はせずに今後の情報をご確認ください。