岸田さんというのは極めて「うす味」…国民感情をゆさぶることがなければ

ーー岸田さんはずいぶんやっている、防衛費2%アップとか、原発の再稼働とか、それが、イメージとしてマイナス方向に行くのはなぜか?

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
安倍政権のときに比べると、安倍政権のときは今井尚哉さんが総理秘書官、もう1人、それを支えている佐伯耕三さんという秘書官がいて、ちょっと身近で見ていると、「それちょっとやりすぎだよね」って僕らが思うぐらいメディア操作していたのです。岸田政権は、いい意味でも悪い意味でもメディア操作をしていないのです。安倍さんのときは(情報を)ここへ流して、こっちも流してこういうふうに書かせようとか、何時に発表するかとか、朝刊に入れるか夕刊に入れるかとしょっちゅう考えていた。正直、率直な印象は、いやらしいなと思ったときもあるのです。でも、岸田さんはそういうことをされてないのです。岸田さんの周りの人たちも。それが一つの原因であるのと。岸田さんの場合スピーチライターがいないのです。安倍さんのときは、佐伯耕三さんとか、外交だと谷口さん(元内閣官房参与・谷口智彦氏)がやられていて、今は総理秘書官室の人たちが作っているのです。それは、霞が関官僚の中でも、選りすぐりの方々が集まって来ているのですけれども、非常に正確なのですよ。でも正確なだけで伝わらない、誠実なのだけど伝わらないという結果、胸にドーンとこないのですよ。最後の要因としては、総理側近の人と話していて側近の人が言われたのですが、「岸田さんはヒューマンヒストリーがない人なんだよね」と言うのです。その人の歴史を感じない。つまり安倍さんだったら、祖父が岸信介さんで、保守派っていうことでパッと描けるわけです。菅さんは秋田県出身のたたき上げで苦労しながら這い上がってきたと。だからその人物からどういう人なのかっていうのは、まず受け取れるわけです。例えば僕に岸田さんってどんな人って聞かれると、僕も、3回ぐらい食事して総理になってからまあまあ話している方なのですけれども、「岸田さんってのは、こういう人なのだ」とって言えないのです。だから、僕らが情報を受け取るときに言葉を聞く、話を聞くときに、話し言葉を受け取るだけじゃなくて、発信者の人間性とか様子とか全て含めて受け止めるわけですね。そこの部分が岸田さんというのは極めて「うす味」。

ーー会見見ても、こんなとき自分の言葉で困ったとか、かわいそうとか何とか言えばいいのに全部(原稿を)読んでしまう。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
読んでいる。言葉が硬いのです。ただそれのプラスがあったとすれば、去年12月に防衛費の倍増を決めたとき、反発がほとんど起きなかったのです。安倍さんが同じことやっていたら国会を取り巻くデモが発生しただろうと思うんです。そういう何かあまり感情を揺さぶらないっていうのがいいときもあるのですが、けれども、内閣支持率のことを考えたときやはり国民感情を揺さぶるようなことがなければ、なかなか支持率は、上があがってこないだろうと思います。

ーーその割に、支持率を気にしているのかもしれませんけれども、割合にお元気ですよね

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
そうですね、会われた人に様子は、どうでしたかと聞くと、やはり元気だったっていうことを、それはもうずっとそうですね。非常に快活でまあまあ話が弾む方ですよ、話していても。でもそれが、安倍さんとか菅さんとか、昔だったら田中角栄さんとは全然違う。人間性のインパクトってあまり感じませんよ。

「聞くチカラ」じゃくて「聞かないチカラ」がすごい

ーーある意味、「聞くチカラ」が自分にはあるからこれを中心にしてやるってのが、私達の言うこと聞いてくれるのかしらと思うぐらいに、なんか全然評価がちがう。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
「聞くチカラ」ってよく言われているのですけれども、総理に近い人ほど「聞くチカラじゃなくて、聞かないチカラがすごいんだ」っていうことを言われますよ。頑固。僕も2回ぐらいぶつかったことあるんですけれども、もうこの人本当に頑固な人だなと思ったことありますよ。

ーー(岸田総理は)何をしたいかわからないっていう、もう一つの評価がありますよね

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
僕がその知り合いと話して、やはり岸田さんは、何をしたいかわからないのだよねっていうことは、よく言われるのですよ。自分の方では先ほどのような実績(防衛費アップ、原発再稼働等)を上げてやっているじゃないかと言っても、相手はやっぱり腑に落ちないんですね。