最近、東京ディズニーリゾートが各地の花火大会でドローンショーを開催したり、横浜でもポケモンのドローンショーが展開されたりと、各地でドローンが夜空を彩っている。神宮外苑でも今月6日、走高跳や槍投げをする陸上選手など様々な形を描いたドローンが舞った。その数、なんと900台。これは実は国内最大級の機体数なのだという。それだけ大量のドローンがぶつかることなく、一糸乱れぬ精密な動きができる裏側には一体どのような苦労とハードルがあるのか。ドローンショー・ジャパン代表の山本雄貴氏に話を聞いた。

ー「ドローンショー」、各地で展開されるケースが増えていて需要の高まりを感じますがどういったメリットや効果があるのでしょうか?

「導入のし易さという観点では、以前に比べて格段に実施への障壁が下がっています。予定した日時に予定通りの機体数を問題なく飛行させるという点では、弊社がこれまで実施してきた100回以上のドローンショーで技術面、運営面で確実なものになってきています。一方で人口集中エリアでの開催にはまだ安全面で様々な制約があります。」

「ここのところ各地で開催が増えている背景としては、ドローンショー自体の認知が上がったことや、SNS等で話題になり易く、導入にかかる費用に見合う効果が得られるという点が大きいかと思います」

「また、花火やプロジェクションマッピングなど、他のライブ演出と比べても、再現性の容易さ、正確さがメリットとして挙げられます。基本的に、同じような飛行エリアを確保できれば、他の地域で見たままの同じ演出が再現できるので、顧客が期待するイメージと大きく乖離することがなくサービスを提供できます」

ードローンショー全体の演出は、どのように作り上げていくのでしょうか。

「お客様の希望に沿って、まずはCGを活用しドローンがどのような動きをするかシミュレーションします。その後、それらの動きを各ドローンに割り当て、全体として画が浮かび上がるようになっています」

ーたくさんのドローンが空中を飛行して、衝突しないのは何故ですか?

「現在ドローンショーでは、GPSから得た位置情報に加え、RTK(リアルタイムキネマティック)という地上の基準局からの位置情報によって高い精度の測位を可能にする技術を足し合わせることで、通常数メートル出てしまうGPSの誤差を数cmまで縮めることで、コンピューター上でのアニメーションに沿った正確な動きを再現することができるのです」

ー今回は日本国内ではかなり大規模なドローンショーになったかと思いますが、御社でこれまで行ってきたショーとの一番の違いは何だったのでしょうか。

「まず、900機という台数になります。弊社ではこれまで、安全を考慮して500機前後までを運営の目安としてきました。しかし今回は『世界陸上2023 ブダペスト』、『アジア大会・中国杭州』(9月23日開催)など伝えたい情報・文字の視認の観点、ショーのメインとなる陸上選手の動きをよりリッチに見せたいとの想いで、900機という台数を選択しました」

ーこれまで500台前後だった運用台数が2倍に大幅に増やせた理由は何だったのでしょうか。

「地上の基準局とドローンとの通信にはこれまで2.4GHz帯を使用していました。これは現在の法令で、屋外で事前の許可なしに使用が許されています。但しこれで使用出来るチャンネル数は最大4まで。つまりwi-fiのアクセスポイントを最大で4基までしか使用できません。弊社で安全を第一に、1基のアクセスポイントに対するドローンの同時接続を125台までに定めています。ですのでこれまでは理論上安全に運用できるドローン台数は500台まででした」

「今回、国内で初めて「無線LAN規格における5GHz帯の屋外実験局免許」を取得し、5GHz帯を併用することで、従来4基のアクセスポイントを8基まで増やし、理論上1000台までの安全運用を可能にしました」

ーこれまで国内ではチャレンジしたことのない領域。実施に至るまではどんな苦労があったのでしょうか

「初めてご相談いただいたタイミングで、すでに実施の3ヶ月前というタイミングだったので、場所の選定から演出内容の確定まで、ものすごいスピードで進めさせていただきました(笑)しかも900台という大規模案件で、東京都内でとなると、飛行許可を取得するために近隣施設や住民への説明を含めると、20箇所くらいは許可取得に動き回りました」