■【ケース3】“木密地域”に暮らすあなたは…
都内でよく見られる木造住宅が密集した“木密地域”です。耐震化や不燃化といった対策が進み、建物被害と死者の想定は10年前より3割減少しましたが、いまだに、甚大な被害が想定されています。
太郎さんの実家は荒川沿いにある木密地域。70代の両親は、築40年の木造住宅に2人で暮らしています。
地震の直後、近所の住宅の多くは瓦が落ちたり、壁が崩れたりしました。なかには完全に倒壊した家も。地震発生が夕食の時間帯で、火を使っている家庭が多く、火災も多発。強風で火は瞬く間に周囲に燃え広がりました。道路が狭く消防車はなかなか現場に近づけません。太郎さんの両親の自宅も、耐震性が低く半壊。2人は、歩いて近くの避難所に避難します。携帯電話で太郎さん家族に電話をかけますが、通じません。避難所では昔と比べ、住民同士のつながりが希薄で、運営が混乱しています。
3日後、避難所に来る人が急増。在宅で避難していた人たちの備蓄が枯渇したためです。避難所の中は過密になり、物資も行き渡らなくなってきました。ごみやトイレの処理が遅れ、衛生環境も急激に悪化。高齢の夫婦はストレスが増していきます。
1週間後、父親の常備薬がなくなりました。慣れない避難生活で体調や病状が悪化する人が増え、震災関連死の危険性も高まってきます。
■【木密地域での対策】初期消火や防災訓練高齢者でもできることを
足立区の千住柳町。古い家が目立ち、道路や、家と家の間は狭く住宅が密集しています。
住民(70代女性)
「潰れるのも怖いし、火が出たら道路が細いから消防自動車も入ってこないでしょここは」
住民(40代女性)
「隣の家と間が結構幅が狭いので、そうすると何かあったときに火をもらっちゃうこともあるかもしれないし」
建て替えなどによる、耐震化や不燃化は進んでいますが、家同士の距離や道路の狭さは変わらないところが多いといいます。
住民(70代男性)
「(10年前と比べて)高齢者が多くなったし、一人住まいの人が多くなった。声かけが一番重要なのでやるようにしました」
足立区によると、こうした地域では、高齢化が進み消防団のなり手も減少しているといいます。そのため高齢者自身で、火事が起きた初期の段階で消火できるよう、小型の消火器を設置し、防災訓練の回数も増やしたということです。
今回の首都直下地震の被害想定は、東京都のホームページで見ることができます。都庁の幹部は「死傷者や建物の被害の数字だけだと現実的に考えてもらえないことが多い。どうやって“自分ごと”として捉えてもらえるかを工夫した」と話します。「もしも」が起きた時を想定し、1人1人が自分の状況にあてはめて、備えをしておくことが大切です。
(東京都庁担当 寺川祐介、武智真紀)