■【ケース2】“陸の孤島”タワーマンションにいるあなたは…

今回の「災害シナリオ」で新たに指摘されたのは、タワーマンションに潜む危険性。高さ45mを超える高層の建物は、ここ10年で4割増え、災害時は“陸の孤島”となる恐れがあります。

太郎さんの妻・花子さん(45)は、地震発生時、仕事を終え子どもたちと自宅にいました。自宅は湾岸エリアにあるタワーマンションの25階です。

高層階のため、長周期地震動で歩けないほどの大きな揺れに見舞われました。固定していなかった本棚は倒れ、キャスター付きの家具は大きく動きました。マンションの建物自体に目立った被害は無いようですが、全館が停電し真っ暗です。災害に備えた備蓄はしておらず、家には最低限の食べ物しかありません。
花子さんは食糧を調達しようと部屋を出ます。エレベーターは停止しているので階段で地上に降りました。近くのコンビニを何軒も回りますが、生活必需品はあっという間に売り切れてしまっています。周辺の避難所はどこも食料などを求める人であふれています。花子さんは仕方なくマンションに戻り、25階まで階段を上って自宅に帰りました。
翌日になっても停電は続いています。水道から水が出なくなりトイレも使えません。スマートフォンは圏外のまま。太郎さんとは丸1日連絡が取れていません。ご近所づきあいも薄く、困り果ててしまいました。

■【自宅での対策】簡易トイレなど“3日分”の備えを

東京都は水や食糧、簡易トイレなどをまずは3日分、備蓄するよう呼びかけています。東京都のサイト「東京備蓄ナビ」で備蓄の目安を調べることができます。

■【検証】3リットルの水を手に1階から48階へ階段で…


エレベーターが止まったタワーマンションでの生活がどれほど大変か。
28歳の記者が大人が1日に必要な水3リットルを手に持ち、1階から48階まで階段で上ってみました。
10階までは「意外といけるな」と順調でしたが、20階を過ぎたあたりから、喋るのが苦しくなってきました。40階から先は、足を動かすのもやっと、という状態に。ほぼ休まずに上り続けること14分。息も絶え絶えになりながら、48階に到達しました。カメラのレンズ越しでも分かるほど顔は真っ赤になり、汗だくでした。

お年寄りや怪我をした人が地上と行き来するのは極めて難しいと感じました。

管理組合が中心となって対策を進めているマンションもあります。東京・港区の48階建てのタワーマンション「芝浦アイランドケープタワー」。東日本大震災を28階の自室で経験した住人は、「このまま部屋で死ぬのか」と孤独と恐怖を感じたといいます。

芝浦アイランドケープタワー防災チームのメンバー
「エレベーターは止まって使えない。大変なんですよ、高いところなので。避難所も満員で行けないし、1階に降りたところでなにもできない、だから部屋に戻ってもらうしかない。在宅避難しかない」

このマンションでは、地震が起きたら各階のエレベーター前に集まり、住人同士で安否を確認することになっています。家庭での備蓄も呼びかけていますが、各階の倉庫には3日分の水や食糧などが備蓄されています。エレベーター内に閉じ込められるケースも想定し、エレベーターの中には、水やカンパン、簡易トイレなどが入った非常用のボックスが設置されています。