背負うものが何もない、それが今の強み
高柳:
去年までの福部選手、寺田選手、青木選手、ハードル戦国時代の中でまさにその一角に入っていったとみんなが思ってると思うんですけど、自分が他の選手には負けない強みはありますか。
田中:
寺田選手はいちアスリートとしてだけじゃなくて実業家として、母としての面もあって、青木さんはずっと陸上界ハードル界を記録で背負ってこられて、真子さんは日本記録という大きな記録を出されて、それぞれ皆さん背負うものがあって、それをしっかり果たされているんですけど、私は 4人目なのであまり何もありません。それが今の強みです。

高柳:
皆さんより一つ若い世代に入ると思うんですけど、気持ち的にそこは楽なんですか。
田中:
はい。レース前もすごくそう思っていました。私が初めてそういう代表の選考に触れたっていうのが高校3年生の日本選手権で、木村文子さんとかがリオオリンピックの選考がかかってるレース。私もギリギリ決勝に残って、そのときに自分が本当に及びもしないトップ選手たちがとっても緊張してるのを横で見て、こんな選手も緊張するんやって思ったのを覚えていて。今回どちらかというと自分がそのポジションに回ってきたっていう感じではあるんですけども、その気楽さというかは忘れずにいようと思ってました。
高柳:
レース終わった後は、(他の選手と)抱き合ったりするシーンもありましたけど、日本選手権とか。普段サブトラックとか、レース後とか、会うとどういう話しをしますか?
田中:
サブトラックではあまり会うことはないというか、そこまでたくさん話はしないんですけれども、レースが終わった後はいろいろお話をさせていただきます。それこそ連戦が続いたので疲労が取れたとか、しんどかったねとか、すごかったねとか、結構何でもフラットにお話させていただきます。
寺田明日香選手は「ライバルでありながら、愛を持って接してくださる」
高柳:
関係性的には切磋琢磨している、あるいは仲良くっていう感じなのか、どうですか?
田中:
私の個人的な印象になるんですけども、寺田選手が精神的にとても大人で私達のこともライバルでありながら育てようではないですけれども、すごく愛を持って接してくださるなというふうに思ってます。だから福部選手とかもそういった中で競技をされていて、いい雰囲気を作られてるなと思います。
高柳:
世界陸上(100mハードル予選は23日)で何か目指す部分はありますか。
田中:
具体的な目標とか記録とかを口に出すのは、あえて避けているところであって、それが自分のプレッシャーを少しでも減らそうとしてる小賢しい小細工の一つでもあるんですけど。なのでこれといったものはないです。でも、戦って選ばれたレースになるのでしっかりと責任を持ちつつ、人生においてそんな何十回もある経験ではないので、精一杯楽しもうと思います。