<高木住子さん>
「戦争がひどくなっちゃったですよ。空襲が激しくなって。従軍看護婦で来るようにいわれましてね。戦争中だったから、傷病兵のために尽くしたいって」

戦地に行く覚悟を決めた高木さん。しかし、病院長は「もうすぐ戦争は終わるから」と引き止めました。
<高木住子さん>
「先生がそんな、負けるなんてこと、いっちゃいけないんですけど、私らその時初めて…絶対負けると思ってなかったの、だから行くっていってたでしょ。勝つから、勝つために、看護のために行く予定だったのにね。お国のため。ほんと、それだけ」
この音声を録音した静岡大学の白井千晶教授です。

<静岡大学 白井千晶教授>
「戦争と産婆は本当に切り離せないこと。救護班に所属していたので地元を守るために疎開さえ許されなかった。ずっと地元を守った方もいれば、従軍看護師として戦地に一緒に出掛けた方もいれば、外地に行って、いろいろな方のお産をとった方もいれば、生み育ての歴史がまさに凝縮されている」
国策を担った産婆。しかし、そこにはひとりの人間として、尊い命と向き合う姿がありました。

「迫ってくる空襲警報。でも産婦さんを置いては逃げられない。さく裂した爆弾が地面を跳ね上げる。気がついたら産婦の上に覆いかぶさっていた」
高木さんの家族は、命に向き合う母の姿をみていました。