「もう何の楽しみもない」息子3人に先立たれた敏さん(96)
続いて訪れたのは、96歳、一人暮らしの女性の家です。
(小澤さん)「こんにちは。敏さ~ん」
(國方敏さん)「きょうはさっぱり目が見えん、きょうはもういよいよじゃ」
(小澤さん) 「これは見える?」
(敏さん) 「あんたの手は見える」
(小澤さん) 「椅子に座ろうか」

96歳、一人暮らしの敏さん。ここ数日で、急に目が見えなくなったといいます。看護師のうたさんは、敏さんの言葉全てに注意を払います。
(小澤さん)
「これミルク、まだ熱いと思う。ここにあるんは見える?」
(敏さん)
「うん、それは見える」
(小澤さん)
「今日はお昼はじゃあ食べとらんの?」
(敏さん)
「食べとらん、朝パンとこれ食べた」
(小澤さん)
「今日の夜は何食べるん?」
(敏さん)
「晩は食べん」
いま、敏さんが今頼れるのは、島に住む遠い親戚しかいません。

(小澤さん)
「これからのことね、どうするいうて家族に相談できた?」
(敏さん)
「この事件に子どもらを巻き込みたくない。私には分かっとん、何かの祟り」
(小澤さん)
「祟り・・・そんなん思いよん?」
(敏さん)
「今月6月がなぁ、三男が2日、長男が20日、こないだ死んだ四男が27日」
(小澤さん)
「月命日か」
(敏さん)
「6月に3つ重なっとん、せやからなぁ...」

3人の息子に次々に先立たれた敏さん。島の外に住む他の2人の子供に迷惑をかけたくないと言います。
(敏さん) 「もう何の楽しみもない」
(小澤さん)「何の楽しみもないん?」
(小澤さん)「もっと見えなくなってくるようやったらね、診療所に言うてね。じゃ、また来ます」
(敏さん) 「ありがとう」
島から見えてくる「超高齢社会」の現実

(小澤さん)
「明らかに、今みたいに生活の中で出来ることが減っているので、もうこうなったらご家族の登場なんですけど、やっぱりご本人も言われてたけど『子供に迷惑かけたくない』と。
「今日はこうでも、明日どうなってるかちょっと心配な人なので。何とか1人で頑張ってたけども、そろそろそれが厳しいかなというケースで」
「それを街なら『介護の方に』『民生委員さんに』ってすぐ入れると思うんですけど、いかんせん人が...診療所そうですけど島は少なくて」
「難しいですね、もう役割だけにこだわらずに、それぞれが出来ることを、というふうにはなっていきますね」

島から見えてくる「超高齢社会」の現実。うたさんは、島の命を懸命に支えています。
(第3回に続く)