島の「生と死」に向き合う 看護師の「うたさん」

瀬戸内海に浮かぶ、香川県土庄町の豊島(てしま)。この島に、高齢者の命を懸命に支える唯一の診療所があります。

人口減少、過疎高齢化が進む島で、日々島の高齢者たちの「生と死」に向き合う看護師・小澤詠子さん、通称「うたさん」に密着しました。

第1回から続く)

瀬戸内海に浮かぶ“産廃”と”アート”の島「豊島(てしま)」

瀬戸内海に浮かぶ、香川県土庄町豊島。25年にわたって、住民一丸で産業廃棄物の不法投棄と闘ってきた島です。

一方、近年では瀬戸内国際芸術祭をきっかけに「アートの島」としても知られるようになりました。「産廃とアートを学ぶ島」...豊島もこの数年で大きく様変わりしました。

(フランス人観光客)
「景色が非常に素晴らしい」
(愛知から)
「祖父母が豊島に住んでいるので、こんなに観光客の方がいるっていうのが本当に豊島は変わったなと思います」

島の命支える、豊島で唯一の診療所

人口は900人。その半数が65歳以上の高齢者です。週5日開く町立の診療所は、島の住民たちが頼りにする唯一の医療機関です。

この日、【画像】のようにお腹周りが真っ赤に腫れあがった74歳の男性が診療所を訪れました。

(事務員) 「どんなんなっとん?」
(英三さん)「痛いで、痛いで」
(事務員) 「うわ~、痛そう」
(高齢女性)「あんたこれ、ヘルペスが脳に来たら恐ろしいで」
(看護師・小澤詠子さん)
「英三さん、この水ぶくれ、薬をうまく塗ってくれとるわ。潰れんように塗ってくれとるから」

(英三さん)
「診療所がなかったら、小豆島の中央病院に行くけどもじゃな、ここで先生がおってくれりゃなんちゃ」

ー高松から来る先生は頼みの綱?

(英三さん)
「そりゃそうじゃ、そりゃもう」

「無医地区」の診療所 高齢者の命を支える “砦”

島に、常勤の医師はいません。週5日、高松市にある香川県のへき地医療支援センターから医師が派遣されています。この日は、島の高齢者・勲さんが風邪の症状を訴えて来院しました。

(香川県へき地医療支援センター 岩井敏恭医師)
「勲さんは風邪をこじらせたら怖いから、ちょっと抗生物質の点滴行っとこう」

「風邪こじらせたらすぐ危ない人が多いので、そういう人は早めに抗生剤を点滴したりして様子を見ていますね」

電話が鳴りました。緊急で手術を行うこともあります。

(看護師・小澤詠子さん)
「縫う準備ですね。ちょっと転んでぶつけて額がパックリと。打ってしまったみたいで」

(岩井医師)「じゃあうたちゃん、ヨンゼロ(縫うための糸)をちょうだい」
(小澤さん)「ヨンゼロ、1個なんですけど」

診療所は医師1人、看護師3人、事務員1人の5人体制。限られた条件の中で、内科、外科、小児科と、できる限りの医療を提供します。転んで額が割けてしまった女性、無事縫合手術が終わりました。

(小澤詠子さん)
「お疲れ様でした!」