―――だから野球の現場の選手もそうですし、それ以外のファンも、普段野球を見ていない人も応援したくなるそういう人物でしたね。

掛布雅之さん:僕が一番印象に残っているのは、彼が台湾でのウインターリーグに参加したときのこと。そのときの代表チームは巨人さんで、巨人のマネージャーの方に僕はご挨拶に行ったんですよ。そのときに巨人のマネージャーの方が「掛布さん、横田っていう選手はすごいですね」と。「日本人チームの全体ミーティングが終わった後に、私のところに横田が来ました」と。そのとき横田は何を言ったと思いますかと。「このホテルでバットを振るところありますか」って言ったんですよ。そういうことを守り続けた男なんですよね。遠征先に行っても必ず「横田、お前不器用なんだから、みんなと一緒の練習だけではレギュラーになれないぞ」「1人に強くなりなさい。1人でやる練習を大切にしろ」と。「ホテルの(バット)振る場がわからなければ、ホテルのフロントに行って、どこか振るところありませんかと聞きなさい」と。それを台湾の遠征、ウインターリーグでですね、やっていたというのを聞いたときに、これで僕は横田は大丈夫だと確信しましたね。

―――その言葉を忠実に守って、やっぱり上手くなりたいって思い続けたのでしょうね。引退試合を振り返りますが、2019年9月26日、阪神鳴尾浜球場。ボールが見えやすいのでライトの守備を横田選手は希望していたと。当時の平田勝男2軍監督に伝えていたのですが、平田さんは「開幕スタメンを取ったのはセンターだろう」と。9回の1イニングに出場する予定でしたが、急遽、8回途中2アウト2塁の場面で「センター、横田」と。

掛布雅之さん:これ素晴らしいですね。この起用法ってのはですね。

―――やっぱり元々センターだからここでということですよね。9回の1イニングに出場の予定だったのですが、8回がこういう状況だった。9回裏がなかった可能性も。なので行かせたと。平田2軍監督は、守備につくときに必ずダッシュで向かう姿が好きだったというふうにも語っています。

掛布雅之さん:最後まで横田は横田でしたね。ただただ、僕は悔しいですね。