ウクライナは大国ロシアと互角以上に戦っている。それは西側の軍事支援あっての結果であることは明白だ。日本も有事の際、同盟国の支援無しにはどうにもならないのは同じだ。しかし、島国である日本は海に守られているという見方がある一方で、海を封鎖された場合、ウクライナより深刻だという側面もある。
自国で武器を作る能力がなくて大丈夫なのか…そしていまや武器生産そのものとともに、武器を輸出できる力と外交力との間に大きな相関関係があるという。日本の外交力を見るうえでも防衛産業の現在地を見ていく。
「北朝鮮と日本の距離は7~800キロあるが、現代のドローンにとってはそれほど問題にならない」
兵器と平和。ウクライナの軍事専門家、イワン・スパトク氏は身をもって戦争を体験し改めて実感したことがあるという。

ウクライナ軍事専門家 イワン・スパトク氏
「大規模な製造施設、特に武器製造施設は都市に配置すべきではない。都市の外、できるだけ遠くに配置すべきだ。(中略)理論上、破壊工作や無人機の攻撃、巡航ミサイル、弾道ミサイルで爆発する可能性のあるものは全て地下に配置すべきだ。出来るだけ深く、最低でも100メートルの深さで配置する。そして全ての倉庫や修理施設は都市や人口密集地の間に大きなアリの巣のように配置すべきだ。たとえ1つの出入り口を破壊されても他のいくつもの出入り口が使える。これは重要な点だ」
ウクライナは平和が続いたことで、様々な“備え”をしてこなかったことで、今回大変なことになった。特に10年前まで友好的だったロシアが突然、いくつかの地域を占領し、挙句侵略戦争を仕掛けてくるとは思いもよらなかったという。その体験からスパトク氏は日本にも警鐘を鳴らす。
ウクライナ軍事専門家 イワン・スパトク氏
「今日は、起こりえないと思うようなシナリオが現実になることもある。この戦争は私たちに最も狂気じみたシナリオや最も非現実的なことでも実現する可能性があることを教えてくれた。(中略)日本も隣の国々と問題があると思う。(海で隔てられ)距離が離れているからどうにかなると思うかもしれない。しかし、あなたの生活を妨害する技術も存在する。北朝鮮と日本の距離は7~800キロあるが、現代のドローンにとってはそれほど問題にならない。実際ウクライナでも現在、射程距離1000キロのドローンを製造している」
「外部の支援無しに自衛する能力を持つ必要がある」
ウクライナ軍事専門家 イワン・スパトク氏
「私は日本の軍需産業がアメリカから非常に多くの輸入を行っていることを知っている。しかし、代替手段や類似品を持つことができるなら、日本は必ず持っておくべきだ。島国であるため、いつ何が起こるかわからない。武器は国内で製造した方が良い。例えば武器を輸入している国と良好な外交関係を結んでいたとしても、突然政権が変わり、“もう日本には武器も技術も送りたくない”と決定するかもしれない。その瞬間、日本は輸入していた兵器のテクノロジーを一切失うことになる。それを別のものに置き換えるには何か月、いや何年もかかる。だから最善の策は独自のプロダクションを持つことだ」
更に隣国と地続きのウクライナとは違い、島国ならではの危険性もあるという。

ウクライナ軍事専門家 イワン・スパトク氏
「仮に日本がミサイルを持っていたとして、供給される小さなチップが無い場合、周囲を船で封鎖されれば、そのミサイルを使うことはできなくなる。(つまり海に囲まれているからこそ)外部の支援無しに自衛する能力を持つ必要があるのだ。少なくとも半年から1年は状況に応じて自力で耐えることができるようにする必要がある」

自民党国防議連事務局長 佐藤正久元外務副大臣
「自衛隊にいる時に演習などでみんなに頑張ろうというんですが、『隊長頑張りたいのですが弾がない』という状況があって、そういうのを“たまに撃つタマがないのが玉にキズ”っていう自衛隊川柳があるんです」
「今回の防衛装備基盤強化という法律を考えるうえでも、国産化を追求すべきなのは大前提なんですが、現状を考えるとできない部分は同盟国との共同生産、共同開発となります。ウクライナのような長期戦となると同盟国と同じスペックの装備品を持ち、お互いに備蓄し支援することが大事になってきます。さらに今イギリスとイタリアで戦闘機を共同開発しますが、それはリスクを分散したり、その戦闘機を売ることで戦闘機連合のような形で守り抜いたりする方向になっています」