「何も言えないけど、分かってください」 目で訴えるウイグル族
モスクや中国語教育、再教育施設など政治性を帯びた話に及ぶと、途端に口が固くなるウイグル族の人たち。彼らにとって政治的な話題を口にし、誰かにそれを聞かれるということは自身だけでなく家族や親戚を危険に巻き込むタブーなのだ、とこの取材中何度も思い知らされた。
物言えぬ中国社会の中で彼らはYesともNoとも言わず、いつも私たちに目で訴えかけてくるのだ。「何も言えないけど、分かってください」と。
その目を見るたび、10年前出会ったウイグル族の友人アクバルがウルムチで政治的な話題に触れた私に話した「どこに私服警察官がいるか分からないから、政治的な話はここではやめてくれ」という言葉と強張った顔が何度も思い出された。
この10年、経済的な発展を遂げ、ウイグル族の人々の暮らしぶりは豊かになったように見えた。しかし、その発展は、ウイグル民族らしさやイスラム色の強い文化を手放し、中国化を受け入れることと引き換えなのだと改めて思い知らされた。
今回、新疆に行くにあたって、久々にアクバルに連絡をしてみたのだが連絡はつかなかった。彼がいまどこで何をしているのかはわからない。
10年前、私を新疆に導いた彼は、ウイグル族が置かれた今の状況についてどのような想いを抱いているのだろうか。
いつかまた北京のあのバーで、ビールを飲みながら聞いてみたい。
(前編・後編のうち後編)
JNN北京支局カメラマン 室谷陽太

















