刑務所でつくられる高品質のメイドインジャパン

新型コロナの影響で長い間中止されていたあるイベントが、各地で再開されている。多くの製造業や小売業の人々にとっては経済の再開を切望し、待ち望んでいた3年間だったが、ようやくコロナ前に近い規模で人々が集まる風景が見られるようになった。

このイベントもその一つ。受刑者が刑務所内の工場などで作った「刑務所作業製品」を購入することができる「矯正展」と呼ばれる即売会だ。

受刑者は日々、将来の社会復帰に備えて様々な刑務作業に従事しているが、これらの製品は北は「網走刑務所」から南は「沖縄刑務所」まで全国にある61箇所の刑務所や刑務支所で受刑者たちが手がけたものである。

「刑務所作業製品」は1986年、材料の提供や製品の納入、販売を行っている「財団法人矯正協会刑務作業事業部」の英訳Correctional Association Prison Industry Cooperationの頭文字をとってキャピック「CAPIC」として商標登録されている。

私は今年に入って週末を利用し、およそ3年ぶりに開催された「横浜刑務所」と「府中刑務所」の「矯正展」を訪れた。

いずれの会場にも洗剤やバッグ、文房具、財布、バーベキューコンロ、乾麺、ブックカバー、便せん、らくがき帳・・・・様々な手作り製品が所狭しと並んでいた。
特に人気商品として長年、売上げ1位の支持を受けているのは「横須賀刑務支所」の石けん「ブルースティック」で、ワイシャツの首回りなど頑固な汚れも落とすと評判だ。

また「横浜刑務所」は全国の刑務所で唯一許可された食品加工製造工場でめんを生産、ともとは給食用に稼働を始めたが、現在は一般販売用に細うどん、干しひらめん、中華麺などすべて手作業で製造から袋詰めまでを刑務所内で行っており高い人気がある。

「キャピック製品」との出会いは30年前

実はわたしとキャピック製品の出会いは30年前の夏に遡る。1992年の夏にTBSテレビ社会部に配属されて初めて司法記者クラブ詰めとなった。その後、約6年近くにわたり司法担当を務めることになるが、当初は右も左もわからなかった。それまで千葉県警と警視庁で一通りの修羅場の事件取材は経験していたが、司法試験をパスしたエリートがひしめく検察幹部や東京地検特捜部の現場の検事などいわゆる法曹関係者を相手にコミュニケーションが上手くいかず、情報がとれない落胆の日々を過ごしていた。

そんなある日、わたしは検察庁舎19階にある、唯一馬が合って雑談に付き合ってくれていた検察幹部の部屋を訪れた。その際、幹部の部屋には必ず置かれていた重厚なブラウンの革張りのソファーの座り心地のよさに思わず「これいいですね」ともらした。成果の上がらない連日の朝駆け取材で疲労していた私を包み込んでくれる快適な柔らかさだった。これが私の取材活動に大きな転機をもたらすことになる。

検察幹部はニコニコしながらこう言った「あ、それ刑務所で受刑者がつくってるんだよね」