「国は富み、民は貧しく」と、ぼやきたくなるような数字です。物価高で昨年度の国の税収が過去最高を記録する一方、実質賃金は14か月も連続でマイナスを続けているのです。
税収71兆円は過去最高
財務省が3日発表した2022年度の国の税収は71兆1374億円と、21年度より6.1%増加して、過去最高を更新しました。
内訳をみると、最大の税目である消費税は、23兆793億円で5.4%も増加しました。物価が上がれば、その10%(軽減は8%)である消費税額も自動的に増えます。2022年度の物価上昇率は3.0%でしたが、価格上昇に加え、経済正常化で消費額そのものが増えたため、 消費税額の伸びはインフレ率を大きく上回りました。
所得税は22兆5217億円と5.3%増でした。賃上げの効果に加え、配当収入も貢献しました。法人税は、経済回復による好調な業績を反映して、14兆9398億円と、9.5%もの大幅な増加でした。
物価上昇が名目成長を実現
税収の数字を見ると、物価が上がることは政府にとって良いことなのだと、改めて感じます。物価が上がれば消費税収は自動的に増えます。物価が上がれば、給料も一定上がるはずなので、所得税収も伸びることになります。税収が増えれば、使えるお金が増えますし、借金返済にまわせるお金も増えようというものです。長らくデフレの時代に生きてたので、すっかり忘れていましたが、なるほど、物価が上昇すれば、名目で成長が生じ、こうして税収も上がるのだと、経済学を改めて勉強したような気になります。
こうした税収の上振れで、2022年度の決算では剰余金が2兆6294億円も発生しました。半分は国債の償還に充てるルールですので、残りの1兆3千億円を焦点の防衛費の増額などにまわせるようになりました。当初の剰余金活用予定は7000億円だったので、増えた分、防衛増税が先送りできるかもしれません。