会話の中でいきなり「うるせえよ!」

アポを取り、会うことになったのは名古屋市内の公園。この日は、カメラは持って行かずに、ラフな形で話ができればと思っていました。

しかし… 

「うるせえよ!」 

話をしている最中にも乱暴な言葉が大きな声で出てしまいます。これも「汚言」と呼ばれるトゥレット症の症状の1つだということですが、

言葉を発する度に怜音さんは…

「ごめんなさい…」

謝る必要なんてないのに…と心の中で思いながらもやっぱり慣れないうちはびっくりしてしまいます。

怜音さんが一番苦しんでいるのは声を出した時の“まわりの目”

公園で私とで話をしている時も、通りかかる人たちから視線が飛んできます。やんちゃな若者2人組がたむろしてるように見られていたのかもしれません。

取材中の1コマ

周囲の視線は冷たく、この時は一刻も早くこの場を離れたいと思っていました。取材を通して理解が深まった今は、微塵もそんなことは思いませんが、当時は記者としてあるまじき姿勢だったと反省しています。

取材中「静かにして」と注意される一幕も

1年あまり続けた取材の中で、怜音さんの故郷・鹿児島を訪れたことがあります。怜音さんの友人や家族にインタビューするためです。

友人と談笑する怜音さん


地元の公園に怜音さんが同級生と談笑しているとき、警備員の男性が近づいてきました。


(警備員)
「“声がうるさい”と苦情が入っていますので静かにしてもらえませんか?」

どうやら、怜音さんの「大きな声」が気になったようです。怜音さん自ら警備員の男性に事情を説明します。

(怜音さん)
『僕は声が出ちゃう病気なんです…わざとじゃないんです』


警備員の男性もまさか病気だと知らなかったようで申し訳なさそうな表情をしていました。

きっと警備員に指摘した周りの人もトゥレット症を知っていたら受け流したり、違った対応だったのかもしれません。

でも知らなかったら驚いたり、怖がってしまうのも当然です。かつて私も、同じ感情を抱いていましたから…。

トゥレット症がまだまだ知られていない病であることを改めて実感した瞬間でした。