東京電力福島第一原発の処理水を海に放出する計画について、国際原子力機関=IAEAのグロッシ事務局長は4日、岸田総理に報告書を提出し「国際的な基準に合致している」と評価しました。

グロッシ氏は5日、福島第一原発を視察する予定です。

【スタジオ解説】TUF報道部記者 木田修作
6月下旬から5日にかけて、処理水をめぐって、大きな動きが相次ぎました。6月26日に、設備工事が完了して以降、規制委員会の使用前検査があり、4日はIAEAの報告書が示されました。

ただ、一方で、これが放出へのゴーサインになるかと言えば、そうではないと私は思います。

木田修作記者

確かに、設備の準備は整いました。ただ、「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」という約束については、いまも宙に浮いたままです。

また、最新の世論調査でも、賛否については、分かれたままです。放出にあたって、「理解」というのは、風評を防ぐ意味でも最も重要な要素ですが、状況が大きく改善してはいないと思います。

国際的な第三者機関であるIAEAの「お墨付き」は、放出を進めたい政府にとっては、重要なもので、6月下旬の慌ただしい動きは、やはりそれを見据えて、間に合わせようという意図が透けて見えます。

県漁連との約束については、政府と東電は「約束を守る」と言っていますが、漁業者は反対を堅持していて、理解を得られる見込みは立っていません。ただ、国が書面で交わした約束を反故にすることになれば、今後、廃炉を進めるにあたって、地元に大きな禍根を残すことになります。

漁業については放出後の行く末が、まったくわからない状況です。国は「復興のために廃炉を進める」と言いますが、このまま放出ということになれば、廃炉のために復興が妨げられるという状況も起きかねないのではないでしょうか。

▼処理水 福島の葛藤
処理水の海洋放出に向け、準備が大詰めを迎えていますが、関係者の理解や風評への懸念など、課題は残ったままです。TUFでは、処理水をめぐる課題や現状をシリーズでお伝えしています。