本当に怒りがたぎると、顔は火照るのに、首筋は冷たく冷え切るのか――。私がこんな感覚を味わったのは、考えられないほどひどい差別行為を公然とする人々に、直接攻撃された時でした。(RKB毎日放送報道局解説委員・神戸金史)
◆判決前日にラジオで「被告からの個人攻撃」報告
全国の被差別部落の地名を本やインターネットに載せた出版社に対し、部落解放同盟などが公開の差し止めなどを求めた裁判。東京高裁は6月28日、一審よりも差し止めの範囲を拡げ、賠償金額も増やす判決を言い渡しました。判決は「人間としての尊厳を否定するものに等しく、許容することができない」と厳しく批判しました。
私は高裁判決の前日(6月27日)、コメンテーターを務めているRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、「明日の判決に注目してほしい」と話しました。そして、思い出したくない忌まわしい経験を、リスナーにお話ししました。この裁判の被告から、私自身が攻撃されたことがあるのです。個人のフェイスブックに、誰にも見える形で被差別部落のリストを投稿される、という信じがたい体験でした。
◆信じられなかったネット時代の差別の現実
きっかけは2017年9月、この記事を読んだことでした。
「インターネットと部落差別の現実――ネット上に晒される部落(出身者)」
川口泰司・山口県人権啓発センター事務局長
ネット上に同和地区の所在地情報を意図的に掲載し、拡散し続けてきた中心人物が鳥取ループ・示現舎のMです。「鳥取ループ」とはブログ名(管理人・M)であり、「示現舎」とはMが共同代表をつとめる出版社(社員2名)です。
鳥取ループ(代表・M)は10年くらい前から、「同和問題のタブーをおちょくる」として、行政に対して同和地区の所在地情報を開示請求し、得たい情報が非開示となると裁判を起こし、同時にネットで公開を繰り返してきた確信犯です。
示現舎は「部落探訪」として、全国の部落を回り、住宅や個人宅の表札・車のナンバー、商店、墓碑などを写真や動画で撮影し、住所とともにネット公開し続けています。また、YouTubeに子どもたちや青年の顔が映っている動画投稿を二次利用して掲載し、地元の保護者や関係者が削除要
請をしても拒否し、ネット上で公開し続けています。
これまで結婚差別や就職差別で多くの命と人生が奪われてきました。その中で、行政や学校をはじめ、企業や宗教者、あらゆる団体や多くの人たちの取り組みにより、身元調査や「部落地名総鑑」の規制を勝ち取ってきました。これらをネット社会の便利な機能を悪用し、鳥取ループは、一瞬で破壊してしまいました。
(「SYNODOS 専門家の見解が読める教養ポータル」、2017年9月11日掲載)
私は当時、RKB毎日放送(本社・福岡市)の東京報道部長でした。単身赴任中の部屋で川口さんの投稿を読み、驚愕しました。私が生まれた地域に同和地区はありませんでしたが、中学時代には同和教育指定校として、『橋のない川』(住井すゑ著)などの教材で学んでいたからです。
現在、全国5300カ所の同和地区の所在地(地域名、住所、戸数、人口、職業等)がネット上に公開されています。Googleマップを悪用し、全国の同和地区がマッピングされ、地図まで作成されています。
さらに、市町村別の部落出身者の人名リスト(「同和地区と関連する人名一覧」等)も作成され、1万人以上の部落出身者がネット上で晒されています。
部落解放運動の団体役員などの個人情報(住所・氏名・電話番号等)も1000人以上(2017年1月末現在)、が本人同意なくリスト化され、ネット上に次々と晒され続けています。
ある県では、部落出身者800人以上の住所・氏名・年齢・生年月日等の個人情報がネット公開され、Googleマップに自宅がマッピングされて、ネット上に晒されていました。
(「SYNODOS 専門家の見解が読める教養ポータル」、2017年9月11日掲載)
私は膝ががくがくする感覚に襲われました。心からの怒りを込めて川口さんの記事をフェイスブックでシェアしました。
久しぶりに、血が沸騰しそうなほど、怒りを覚えた。涙が出そうだ。
長年の努力を「一瞬にして破壊した」この人々。日本に暮らす者として、許しがたい。
心の底からの怒りをもって、弾劾する。「お前らは、最低だ」叫びたいほど口惜しい。
ほんのわずかの愚か者の行為が拡散してしまう、このネット社会の恐ろしさに、いたたまれない。(2017年9月12日01:27)

フェイスブック上の友人たちも、私がシェアした川口さんの文章を読んで驚き、怒り、彼らを非難するコメントが多く寄せられました。
「未だにこんな差別の現状があるとは…。心の底から軽蔑します」
「これ、法務省が救済しないといけない人権侵害ではないでしょうか?」