女子100mハードルも、この種目過去最高と言われるレベルの高さを見せた。布勢スプリントは6月25日、鳥取市布勢のヤマタスポーツパーク陸上競技場で、グランプリ種目は男子が100mと110mハードル、走幅跳、女子は100mと100mハードル、走幅跳の計6種目が行われた。女子100mハードルは青木益未(29、七十七銀行)が12秒90(+1.3)で優勝。日本選手権優勝者の寺田明日香(33、Japan create Group)に0.01秒差で競り勝った。8月の世界陸上ブダペスト参加標準記録は12秒78。福部真子(27、日本建設工業)だけが昨年突破済みだが、日本選手権で4位と敗れたため、1〜3位選手が世界陸上出場資格を得た場合は代表になれない。青木と寺田は7月のアジア選手権などで、Road to Budapest 23(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)の順位を上げれば代表入りする。

「粗(あら)を探さないと勝てません」と青木

青木が持ち前のパワフルな走りで、寺田と0.01秒差の接戦を制した。

「このメンバーでしっかり勝てたことはうれしいですね」

3週間前の日本選手権は12秒95(-1.2)の同タイムで寺田に敗れていた。日本選手権は寺田、青木、田中佑美(24、富士通)、福部の4人が0.04秒の間にフィニッシュした激戦だった。19年に寺田が12秒97を出すまで、13秒00が日本記録だった種目。それが今では上述の4人に清山ちさと(31、いちご)も加わり、12秒台が5人もいる。青木、寺田、福部、清山が再戦した布勢スプリントを、青木はどう走って制したのか。

「前半の3台は勢いで、スピードも上がって流れるんです。4台目以降はインターバル間をしっかり刻まないと、ハードルにぶつけてしまうかもしれません。日本選手権はそこで(ハードルにぶつかることを避けるため)浮いてしまいました。日本選手権後はリード脚を、力を加えられるポジションにしっかり下ろすことを練習で意識してきました。今日は何台目かでぶつけて、寺田さんと真子ちゃんが見えたんですけど、落ち着いて、大崩れしないでゴールできたので、まずまずかな」

自分の技術を研くだけでなく、予選のあとにはライバルたちの研究も行った。寺田と福部の動画を見て、2人ともこの日は完璧でないことを確認した。

「2人のマイナス、自分が思ったマイナス的な部分ですけど、それを自分が補えるような走りができれば勝てるんじゃないかな、っていう思いがありました」

以前の取材で、レース後に女子会のような反省会が、自然発生的に開かれていることを明かした。お互いの課題を忌憚なく言い合う。

だが布勢では、青木とコーチが決勝のレース前に対策を練った。「粗(あら)はないかと必死で見ました(笑)」と明かせるのは、仲が良いことに加え、お互いにリスペクトできる間柄だからだろう。その執念(?)が実り布勢では、今季初めて青木に勝利の女神が微笑んだ。