性自認・性的指向は自分では決められません。例えばトランスジェンダー女性は「男性から女性に変わりたい人」と言われたりすることがあります。間違いではないですが、「出生時に割り当てられた性別で生きていくことが苦しいと感じる人」または「自分の本来の性自認に近づけていきたいという認識を持つ人」と言いかえることもできます。トイレ利用については「女子トイレに入りたい人」ではなく、「男女どちらのトイレを使えばよいか躊躇したり、男性トイレを使うことに精神的苦痛を感じたりする人」ということです。

また、トランスジェンダーといっても多様です。幼少期からはっきり(性別違和の)自覚がある人もいれば、徐々に自覚していく人もいて、その度合いには強弱があります。例えば、大人になって結婚して子育てが一段落してから、やっぱり自分らしく生きたいと性別移行する人もいます。そもそも日本では性自認・性的指向についての正しい教育が広がっていないので、性別に違和感を抱えていても「自分がおかしいんじゃないか」と思ってしまう。男性なのか女性なのかとモヤモヤすることは変ではないとちゃんと知っていれば、本人の自己肯定感も変わってくると思います。

戸籍上も性自認も女性、いわゆるシスジェンダーの女性は、日ごろから「私は女性です」と公言しなくても社会の中で問題なく生きていけますよね。でもトランスジェンダーの場合はそうはいきません。例えば、戸籍変更をしてないトランスジェンダーが、事故にあったなどで身分証明書の提示を求められる時や、病院で問診票に女性特有、男性特有のチェック項目に回答しなければならない時に戸籍上(出生時)の性別を伝えなければならない。周囲から「男性か女性かわからない人が受診に来ているんですけど」という会話が聞こえてきたりすることもあるかもしれません。そんな時に洗いざらい自分のことを話さなければならないのは精神的に苦痛です。もちろん、すべてのトランスジェンダーが、このような困難を抱えているわけではありません。