去年と今年4月の「食材費」と「光熱費」を比較すると、この1年間で食材費は約10%、光熱費は約40%上昇していました。

やはり今回の物価上昇、家計への影響は小さくないことが分かりました。

■2%の物価上昇…日銀・黒田総裁の目標は達成?

2%の物価上昇といえば…9年前、日銀の黒田東彦総裁は就任会見で「2%の物価目標の実現に向かって最大限努力することが現在の日本銀行の使命である」と意気込みを語り、安倍政権のもとで大規模な金融緩和を行い、景気を良くすることで安定的に物価を2%上昇させることを目標としてきました。

2013年3月 日銀・黒田総裁就任会見で

今回、日銀は目標としてきた「2%の物価上昇」を“数字上は達成”した形です。

しかし、本来目指した理想の形からは程遠いのが現状です。


■日銀の理想とは程遠い現実…“悪い物価上昇”

日銀が目指した理想の物価上昇は、“賃金が上がって、消費が増え、それによって持続的に物価が上がる”良い形での物価上昇です。

しかし、今回の物価上昇について、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「原材料費の高騰や円安が原因のコスト増による“悪い物価上昇”だ」と指摘します。


ニッセイ基礎研究所 斎藤太郎経済調査部長:
「原油とか天然ガスなどの資源、穀物など輸入品の値段が非常に上がり、それを企業が徐々に価格転嫁したことで2%の物価上昇が実現した。今回の物価上昇は一言でいうと“悪い物価上昇”だと思う。実質の賃金がマイナスになっているので、消費にとってはマイナスだ」

光熱費の値上がりに頭を悩ませる和泉さんも…

夫・匤樹さん:
「僕の給料はずっと据え置きなんですよね。給料据え置きで生活するのに、いろいろ価格が上がっているので嫌ですね」

物価の変動を除いた実質賃金が3月は0.2%減少するなど、企業による賃上げは物価上昇に追いついていないのが現状です。賃金の上昇よりも食費や光熱費の値上がりによる出費の方が大きくなれば、家計の負担が増すばかりで経済の好循環にはつながりません。

■4月の企業物価は10%上昇も…商品価格に転嫁しきれず遠のく賃上げ


ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料価格の高騰や円安による輸入物価の上昇により企業の間で取引される商品の価格が4月は10%上昇しました。

一方で、消費者物価の上昇は2.1%の上昇に留まっていてその差は約8%。国による激変緩和措置など補助金の効果があるとはいえ、企業は仕入れ価格の上昇分すべてを商品の価格として転嫁できているわけではないのです。適正な価格転嫁が進まなければ、企業収益の圧迫につながり、賃上げ実現への道は遠のくと言わざるを得ません。