坂部)LGBT法の整備には期待できますか?
中村さん)肌感覚で良い方に進んではいるんだろうなという感覚は、あります。LGBTQに関しては、10年前と比べたら圧倒的に認知度は上がってると思います。今、学校教育でも少しずつ教科書で、そういう人がいますというふうに教えていて、ちょっとずつ空気が良くなってると思うので。ただ今の法整備は、ちょっと急ごしらえで慌てて作ろうとしてるから、バタバタバタバタしちゃってる感覚がなくはないです。それでも確実に良い方向へ進んでるという感覚はあります。
坂部)同性婚の整備という点では?
中村さん)同性婚で何が得られるかというところなんです、結局。法律として、例えば男女間だとスムーズに行える相続とか具体的な部分が欲しいのは確かにあります。それを「男性女性で結婚する場合と完全に同じものをください」と言っているように捉えられてるような気がどうしてもしています。とりあえず、全部が全部一緒というわけにはいかないかもしれませんが、それでもあってほしいという感覚も当然あるよなって感じではあります。
坂部)中村さんが世の中に望むことは何でしょう?
中村さん)“空気感”だと思います。逆に私が一番恐れているのは、SNSなどの過激な言動です。ちょっと怖い。
顔も隠して、声を加工して、緊張するけれども、今回このインタビュー取材を受けてみようと思ったのは、やはり色んな人に「知ってもらう機会がほしいな」というのがあったからです。
新潟県内で利用が広がる『パートナーシップ宣誓制度』は、2023年5月24日現在の登録件数が、新潟市20件、三条市1件、長岡市2件と、多いとは言えない状況です。
自治体独自の取り組みであるため導入していない自治体へ転居すると無効になったり、登録して宣誓証をどこかで提示する行動自体がカミングアウトになることなどから『パートナーシップ宣誓制度』の利用をためらう人もいるといいいます。
また、すでに自身の性認識を肯定して生きる人に『パートナーシップ宣誓制度』の利用が多いとも言え、そうではない方や誰にも打ち明けられずに苦しむ人へのケアをどうするかを考えると、自治体ごとの取り組みである現在の『パートナーシップ宣誓制度』には限界がありそうです。
当事者たちや支援者のみに限らず広く人々に“空気感”が浸透するためには、適切な法整備と理解の機運の高まりが求められるとも感じられました。