■「中国がロシアと結託…これは世界にとってバッドニュース」
アメリカとの対立という面で「敵の敵は味方」という理屈から、核を含む強力な軍事力を有するロシアと中国が手を組んだ時、計り知れない脅威だと田中氏は言う。
日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「(去年10月)ロシア艦隊と中国艦隊の船が大隅海峡を通過して、デモンストレーションをやった。ロシアは意味を持ってああいうことをやっている。ロシアと中国が結託すれば、強い抑止力(軍事力)になるぞっていう…。でもそれだけにとどまらない。経済が問題。ロシアはエネルギーと木材と穀物で、これは止めれば相場が跳ね上がるくらいの影響しかないが、中国はもっと複雑に世界経済に組み込まれている。例えば、今はレクサスなんか生産が止まっている。上海から部品が来ないからですよ。アメリカなんかは既にデカップリング、中国と分断していこう、半導体もサプライチェーンを西側だけで作ろうとしている。しかし、日本のような資源もなく、国際関係の相互依存によって成り立っている国にとっては、拮抗した形で世界が分断されるのはバッドニュースですよ。だから止めなきゃいけない、絶対に…」
では、どうやって結託を阻止すべきなのか?
■「中国を追い詰め過ぎないことが中露結託を阻止することにつながる」
日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「現在は、ロシアと結託することが自国の利益にならないと中国は明確に判断している。中国にとって優先順位1位は経済成長なんです。(中略)今ロシアに対する西側の行動を見ていてこの経済制裁を中国もかけられたら経済成長を大きく阻害される。だから中国が決めているのは、ロシアと通常の関係を作ることだ。軍事的な協力はしない。情報くらいは与える。エネルギーも他が取引をしないので中国が高く買ってあげる契約を作ったが、これも見直され、むしろ安く買っている。中国は冷静に判断して漁夫の利を得ている」
しかし、今後米中の対立が激しくなってアメリカが中国を追い詰めれば、ロシアと結託するかもしれない。だからアメリカが中国を敵視しない、追いやり過ぎないことが中露結託を阻止することにつながるという。
日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「1972年に、なんでニクソン(米大統領)が中国に行って米中関係を正常化したかといったら、あの時の最大のプライオリティーは米ソ冷戦だった。だから中国をアメリカ側に引き込むことによって敵の敵は味方という形を作りたかった、ということです」
しかし、中国の経済力が世界の中で無視できなくなった今、アメリカが持つ外交の“てこ”はあるのか…。対中政策で弱腰になるように見えることはできないアメリカに、日本は一定程度付き合わなければならない。しかし、地政学上、日本は中国にとって効く独自の“てこ”を見つけ出す努力も今後必要になってくるだろう。
(BS-TBS 『報道1930』 5月19日放送より)