「戦争は外交の敗北」ともいわれる。
ウクライナで起きている戦争も外交の失敗によるものだとしたら、どの国の外交にどんな失敗があったのだろうか?今回はウクライナ侵攻を外交面から読み解いた。

■「外交って、“てこ”がないと相手を動かせない」


外交を語るときアメリカを抜きにしては語れない。ロシアによるウクライナ侵攻においてもアメリカの外交ひとつで状況は全く違ったのだろう。

日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「(ロシアのようなルールを守らない国との外交には)抑止力です。十分な抑止力に裏打ちされた外交をしなければならない。しかし、オバマの時からアメリカは世界の警察官ではないと言っている。それが影響している」

田中氏が指摘するのは、冷戦後アメリカがやってきた戦争はほとんど世界の警察官としての戦争だったということだ。「国際秩序を守る」という名目で国連決議があろうとなかろうと圧倒的軍事力で介入してきた。それをやめると宣言したことはロシアが侵略をしやすくなった大きな要因だという。さらに、アメリカの抑止力低下のほかにもう一つ、重要な要素があると田中氏は言う。

日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「NATOがある時からロシアを真剣に扱うのをやめたんだと思う。とくにアメリカの目は明らかに中国を最大の競争相手としてみている。NATOも戦略の見直しをしていたが、それは中国を念頭に置いた見直しだ。(中略)西側は色々失敗をした。(クリミア併合以降)制裁もかなり緩いものだった。本来は抑止力があるんだけれど、それを損なうような態度をとってきた。それから中国の台頭によって戦略の対象は中国になってしまった」

ウクライナ戦争を止めることはできたと思うが、アメリカもNATOも一貫してロシアを弱体化した国として真剣にとらえてこなかったことで、何度かあった止める機会を逃してきたと話した上で、外務省アジア大洋局長、外務審議官を歴任した外交のプロフェッショナルである田中氏は言う。

日本総合研究所 国際戦略研究所 田中均理事長
「外交って、“てこ”がないと相手に言うことを聞かせられないんですよ。ロシアは、圧倒的な軍事力を持ってる。核もアメリカと同程度ある。それとエネルギーではヨーロッパの最大の供給地である。さらに穀物…。一方ロシアには産業がない。輸出の4割がエネルギー。財政の6割がエネルギー。エネルギーはロシアの西側に対する“てこ”であって、軍事力も同じ。これと対等に渡り合える“てこ”は一つしかない。アメリカなんです。アメリカはエネルギーは自前ですし、軍事力はロシアを圧する。さらにアメリカは金融を握っている。本気でアメリカが動けばロシアを止められるはずなんです。“てこ”のある国が“てこ”を使わなければ外交は進まない」

不幸にして始まってしまった戦争だが、これも遅かれ早かれ終わる。そのあと外交はどこに向かえばいいのだろうか?