相次ぐ減便・廃止に嘆く住民「住む所じゃない」

利用者の減少を理由にバス路線の見直しを進めるのは、西日本JRバスです。金沢市の才田のバス停に止まるバスも今年3月まで平日で25本ありましたが、先月からは14本に。
さらに7月以降は8本になり、わずか3か月の間で3分の1に激減します。
乗客「バスはなくなって…」
運転手「本数減りましたもんね」
乗客「7月からまた少なくなるんだって?」

車の運転免許をもたない乗客にとっては死活問題です。
乗客「みんな“もう最悪や”と言っている。こんなところ、年寄りの住むところじゃないわ」
バスがなくなったらどうするか?という問いかけには「タクシーか、引っ越しするかないんじゃないか。街中に住むしかない…」と声を落としました。
また別の利用者は「やっぱりバス使わないとなくなってしまうと聞いているので、なるべく使うようにはしている。以前と比べるとかなり不便です」と不満を露わにします。
利用者が減ると同時に、廃止や減便で利便性がさらに損なわれる悪循環。しかし、バス会社もただ時代の潮流に流され、手をこまねいているだけではありません。
乗客の利便性向上へ 企業間で協力体制

北陸鉄道安全指導課・渡邊正昭課長「整理券をとって、スマホの画面を降りるときに乗務員に見せていただきたい」
北陸鉄道と西日本JRバスが手を組み去年10月から始めたのは、1日フリー乗車券のデジタル版「のりまっし金沢」
スマホなどでキャッシュレス決済をすることで小銭を用意する必要もなく、運転手に画面を見せるだけでスムーズに乗り降りできます。
渡邊課長「1回購入さえしていればサブスクみたいなというか、定額払い。その日1日フリーに、何回でも乗り降りできるというメリットがある」
このほか北陸鉄道では、SuicaやICOCAなどの全国共通の交通系ICカードを導入する動きも。反転攻勢の大きな目玉として、まずは観光客向けに周遊バスでの導入を目指します。
バスがなくなると…香林坊は片側5車線必要

金沢市・村山卓市長「乗り換えなどを含めた利便性の確保、地域経済の回復がこれから大事になっていく」
今月12日に開かれた「金沢MaaSコンソーシアム」で挨拶した村山市長。コンソーシアムはMobility as a Service=「サービスとしての移動」の利便性向上を図るため、石川県内の企業や団体が手を組むことが狙いです。
取り組みを進める市の担当者は、「金沢市の公共交通は存続の危機に直面している」と言います。
金沢市交通政策課・近藤陽介課長「運転免許を持たない人、運転免許を返納されたご高齢の方。そして学生、子どもたち。公共交通がなければ暮らせない人もたくさんいる。公共交通を守っていかなければならないという思い」
金沢市によりますと、仮にバスがなくなり自家用車だけで今と同じ人数を輸送する場合、中心部の香林坊では片側だけで5車線もの道路幅が必要になるということです。
近藤課長「私たちの大切な町を壊すわけにはいきませんので今ある道路で。どうしても公共交通を活用していかなければいけない」
公共交通という位置づけから、行政の積極的な財政支援を求めるバス会社。官民が一体となったテコ入れは進むのか、利便性の維持向上と企業収益確保の挟間で模索が続きます。
村営バスで乗客1.4倍 北海道・赤井川村の取り組み

バスの利用者減少は全国共通の地域の課題ですが、新たな取り組みで逆に利用者が増えた自治体もあります。北海道小樽市近くの赤井川村です。民間のバス会社は人口およそ1100人の小さな村唯一の路線バスを今年3月までに全て廃止しました。そこで赤井川村が行ったのは“ガバメントクラウドファンディング”です。
赤井川村・大石和朗副村長「今までうちのバスは“空気を運んでいる”と言われていた。今までより使いやすいバスができるのではないかと、住民と相談しながら積み上げてきた」
ネット上で資金を募り、およそ3か月で500万円が集まりました。村は新たなバスを購入、4月から「むらバス」として運行をスタートさせます。すると利用者は1・4倍に増加したということです。
大石副村長「100人が100人満足する方法が絶対にないと思うが、みんなの意見を聞く場がどれだけあるのか、そこが一番大切」
赤井川村は事前の実証実験やアンケートをもとに運行エリアに応じて料金設定を見直し、ダイヤも大幅に変更しました。“バスを残したい”という呼びかけで全国から資金が集まり、村営バスとして復活させた先進事例というわけです。