“第三者委を無視” 担任の証言きっかけに反撃を仕掛けるも…

奈良地裁の判決で弁護団が注目したのは、「当時の担任の証言に“微妙なズレ”がある」という点。弁護団によると、当時の担任は女子生徒の様子について、2014年の第三者委員会の聞き取りに対しては「(体育大会で)みんなと一緒ではない違った行動、例えばちょっと椅子に座ったりしていることが目について」と話している。しかし、2020年の奈良地裁の尋問で同じ体育大会の時について問われた際、「分かりません」と回答している。

 そこで弁護団は、大阪高裁に対し、当時の担任を再度証人として出廷させるよう求めるとともに、「第三者委員会の調査報告で高裁が不安に思う点があるなら問いただしてもらおう」と、元委員長・出口治男弁護士も証人として出廷させるよう求めた。

元委員長・出口治男弁護士

 実は、出口氏は元裁判官。弁護団から奈良地裁判決の内容を聞いて「衝撃を受けた」という。出口氏は、奈良地裁判決への痛烈な批判をしたためた。

 (元委員長・出口治男弁護士 陳述書より抜粋)「一審判決の最大の問題点は、女子生徒が自死に至るまでの経緯のうち、自己の判断に利用できるポイントだけを拾い出して事実であるとし、その他の、積み上げられている多くの事実を、きちんとした説示なく無視している点です。」
「私が裁判官の時代に、先輩達から、とってはならない方法であると厳しく戒められてきたことでした。相反する証拠を、ろくな理由も示さないで切り捨てているのではないかという真実究明に対する畏れ(おそれ)の姿勢を見ることはできません。」

 そこで大阪高裁は、第三者委員会が調査した証言記録を、「インカメラ手続」(裁判官のみが内容を確認すること)で精査したのだが。

(大阪高裁)「証言は外に漏れないことを前提に事実を述べているところもある」

 そして、当時の担任や出口氏のいずれも、証人尋問は行わないと結論づけた。