福島県浪江町のうち、大部分が帰還困難区域になっている津島地区の住民が、国と東京電力を訴えている裁判で、二審を審理している仙台高裁の裁判官が現地の状況などを確認しました。
裁判官が現地を訪れる「現地進行協議」は、25日午前、冒頭を除いて非公開で行われました。
原告側によりますと、裁判官は津島地区の10か所で被害状況などの説明を受けました。この裁判は、津島地区の住民およそ630人が、ふるさとの原状回復などを求めて、国と東電を訴えているものです。
進行協議に先立ち、原告は24日、リハーサルを行いました。
三瓶春江さん「できるなら、原発被害者として見られる目を気にしなくていいこの家に帰りたい」
原告のひとり、三瓶春江さん。家は水源に近かったため傷みが激しく、解体を決めました。子や孫の成長を刻んだ柱だけでも残せないか、悩んでいます。
三瓶春江さん「ふるさと津島に帰ることを諦めたかのように思われる不安の方が大きいです。そんなことを考えると私の心は、張り裂けそうにつらいです」
井瀬信彦さん「いま津島という名前が日本地図からなくなってしまうんではないかと電話くださる方がいます」
地区にある神社の宮司、井瀬信彦さんは、92歳になった今も、月に2度津島に通い、祝詞をあげています。氏子がいなくなった現状を訴えました。
井瀬信彦さん「人のいなくなった神社はどうなるんでしょうか。人が手足をもぎ取られてしまったようではないでしょうか」
原告団によりますと、東電側は、住民への賠償はこれまでにに行われているなどと主張したということです。
原告団の団長、今野さんは…。
今野秀則団長「ここ(津島地区)には私たちの人生そのものがあった、そのことを認めていただき、原状回復に向けて前進する判決を裁判所には期待する」
裁判は今後、仙台高裁で審理が進められます。