大きなターミナル駅に着いたのに、それが「終着駅」かどうか判然とせず、お客はどうして良いのか、不安でたまらない。今回のFRBの決定を例えると、そんな感じでしょうか。

「目標金利」到達も、「終着駅」の確信なし

アメリカの中央銀行にあたるFRBは3日、政策金利をさらに0.25%引き上げて、5.0%から5.25%にすることを全会一致で決定しました。

景気後退懸念や金融不安が燻る中でもインフレ抑制を優先させたもので、これで政策金利は、FRBがターミナル・レート(終着点)と予想して来た、5.1%に到達しました。

なのに、ニュースの見出しは、「打ち止めの可能性を示唆」と非常にわかりにくいものでした。

これまでは声明には、「追加の引き締めが適切」という文言が必ず入っていました。今回、この表現は削除され、今後の見通しはニュートラルにはなりました。

しかしパウエル議長は、「もう利上げはないのか」と聞かれると、「これからデータを吟味する」と今後の利上げを否定しませんでした。

逆に、市場が期待する早期利下げについて尋ねられると、「しばらく利下げに転じることはない」と即座に明確に否定しました。

「インフレ抑制」優先で、「金融不安」再燃リスクも

ようやく目標としていたターミナル・レートに到達したのに、それを打ち消すタカ派的な発言に株式市場は失望しました。
パウエル議長にすれば、それだけインフレ抑制の先行きに自信が持てないわけです。正直と言えば正直ですが、引き締めが遅れてインフレをここまで高進させたトラウマに縛られているように、私には思えてなりません。

FRBは「インフレ抑制」と同時に「景気後退懸念」という命題に立ち向かってきましたが、ここに来て「金融不安」という大きな爆弾を抱え、3つの命題に同時に取り組まなければならなくなりました。

この「金融不安」こそが、今取り組むべき最もリスクの高い命題だと考えるからです。