発達障害や知的障害などがある少年たちが収容されている医療少年院。
なぜ彼らは非行に走ってしまったのか。生きづらさを抱えた少年たちの更生に向けた取り組みを取材した。
生きづらさを抱えた少年たち「暴力が成功体験に繋がるケースも」

三重県伊勢市にある宮川医療少年院。
ここには発達障害や知的障害などのある少年たちが70人収容されている(3月末現在)。
宮川医療少年院の収容期間はおおむね11か月。
少年たちは集団部屋で原則4人で過ごす。集団生活が苦手な少年も多いため、一人部屋も用意されている。
自由のない生活を続ける中、ストレスなどから体調を崩す少年も少なくない。
そのため、精神科医による診察も日常的に行われている。

医師「眠れてない?」
少年「あんまり眠れてないです。多分夜の方が不安が多いんで。なんか絶望するっていうか、死ぬことばかり考えてます、最近」
こうした少年たちの苦痛を取り除くため、院内では投薬治療も行われている。
水井亮 精神科医
「症状の酷さよりも、その背景に気持ちとして辛いことがあるんだなと。否定せずに、いち早く(解決策を)一緒に探すのが僕の役割なのかな」
少年たちは、どのような罪を犯してきたのか。今回、直接話を聞くことが許された。

ーー本件非行は?
殺人未遂 少年(17)
「いじめられて、暴言というか、悪口みたいな感じのことをされまして、ある子を血まみれにしてしまいました」
子どもの頃から活舌が悪く、話すスピードも遅かった少年。よくいじめを受けてきた。そのたびにキレて、相手を傷つけてきたという。

殺人未遂 少年(17)
「自分の心の中にモノサシがあって、例えばこれをやったら復讐せえへんとあかんなとか、メモリみたいなのがあって、相手の命奪わないと気が済まない感じになってしまうんです」
少年は、親にも暴力を振るっていた。
「学校の成績が良くなかったというか、『ちゃんと努力してるのか』ってお母さんに言われて、自分のこと評価してくれてない。それでマグカップで殴った」

令和3年時点で、少年院に新たに収容された少年は1377人と全国的に減少している。一方で、発達障害や知的障害等のある少年が収容されるケースは413人と減っておらず、3割近くに達している。
障害と非行に直接の因果関係はない。ここにいる少年たちは、むしろ被害者になってきたことの方が多いと院長は話す。

工藤弘人 院長
「実際に障害がある方の中で犯罪、非行をする割合はすごく低い。どちらかというと被害者になるケースの方が多い。特に日本だと空気を読むことが求められるが、(少年たちは)苦手で、学校で適応できずにいじめを受ける。やり返したことで自分の居場所を確保する。暴力が成功体験に繋がるケースもあります」

そして今、増えているのが性非行だ。
強制性交などのわいせつ事案や、住居侵入や覗きなど、性に関する非行で収容される少年は多く、70人のうち17人にのぼる。そのうち中学生は9人(3月末現在)。なぜ彼らは性非行に走ってしまったのか。