減税に次ぐ減税、恩恵を受けた法人税
では、どこに財源を求めるのか。議論されていないものがあります。それが法人税です。少子化対策によって、将来恩恵を受ける企業への増税も、当然、議論すべきなのではないでしょうか。
実は、法人税の歴史は、税率引き下げの歴史なのです。2011年度まで法人税率は30%でした。それが、「日本の法人税は高過ぎる」と言われ、2012年に25.5%に、15年に23.9%、16年に23.4%、18年に23.2%にまで引き下げられました。地方税なども含めた法人税の実効税率は29.7%にまで下がり、今や他の先進国と遜色のない水準にまで低下しています。
この間、東日本大震災の復興のための特別増税も、法人に対してはいち早く廃止されました。個人の所得に課せられる復興特別所得税が今なお続き、その一部が防衛費に事実上「転用」されることになったのとは、大違いです。この間、消費税も2回引き上げられたことを考えれば、法人税はまさに破格の扱いを受けてきたのです。
法人税をこれほどまでに優遇して来たのは、企業の負担を少なくすることで、その稼ぎを賃上げや投資に使うことを促すためでした。しかし、そうしたトリクルダウンは10年経っても実現せず、日本の大企業はひたすら内部留保を溜め込んだだけでした。
今、目の前で起きている賃上げは、法人税減税の結果ではなく、海外からの歴史的なインフレという外的ショックの賜物でしょう。法人税減税が当初意図した賃上げや投資といった政策効果を生まなかったのですから、少なくとも消費増税を議論する前に、法人税増税を議論すべきでしょう。経団連会長は、まず、このことに真正面から答えるべきです。
給付と負担を一体で考える時だ
選挙前には、出産一時金の拡充や児童手当の所得制限撤廃など給付のことだけ議論しておいて、選挙後に負担の話を始めるというやり方が、姑息に過ぎます。人間、誰だって、欲しいものがある時に、コストを考えて、結論を導くものです。消費税が上がるぐらいなら、そんな支援は必要ないという人がいてもおかしくはないのです。
何千万円も収入がある世帯の子どもに児童手当を支給するために、貧しい子育て世帯まで消費税増税を負担するなどという政策の愚かさを、ちゃんと議論すべき時に来ています。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)