統一地方選挙が終わったら、すぐに負担増の話が出てきました。経団連の十倉会長は日本経済新聞のインタビューに対し、少子化対策の財源について、「消費税も当然議論の対象になってくる」と述べたのです。
安易な社会保険料引き上げ
岸田政権が掲げる異次元の少子化対策には、数兆円もの財源が新たに必要になることから、政府・与党内では社会保険料の引き上げなどが浮上しています。社会保険料とは、健康保険、雇用保険、年金保険、介護保険のための保険料ですが、これらは主に現役世代が中心に負担しており、社会全体のすべての世代で出産や子育てを支えるという「異次元の対策」の理念とは必ずしも一致しません。
社会保険料の引き上げは、大抵、国会でも増税ほどは議論されず、国民にしてみれば、知らない間に上がっていたというケースも多々あります。日本の社会保険料負担は、高齢化に伴ってどんどん上がっており、それが可処分所得を圧迫しているのが実情です。
そもそも社会保険料は、病気や失業、老後など、自分の身に起きるリスクのために「保険料を掛ける」わけですから、少子化対策の財源とするのは、論理的にも無理があるのです。
その意味では、経団連会長が「取りやすいところから取る」といった議論に釘を刺したことは意味があります。もっとも社会保険料は、被保険者個人だけでなく、企業にも保険料負担が発生するので、経団連加盟の大企業には拒否感が強いという側面もあるでしょう。
日本経済は消費税増税にとても耐えられない
それに比べれば、消費税増税には確かに一定の理はあります。あらゆる世代が等しく負担するものですし、税率引き上げや使い方についても、国会でそれなりに議論されるからです。
問題は、今の日本経済が消費税増税に耐えられるのかという点です。日本の成長力がここまで落ちる中で、もはや消費税は「打ち出の小槌」ではありません。消費税5%を10%に引き上げたことが、その後いかに消費の足を引っ張ったか、アベノミクスへの賛否に関わらず、その影響を否定する人はいないでしょう。格差拡大に、歴史的な物価高が低所得層を直撃している時に、逆進性の強い消費税増税などあり得ない選択肢だと、私は思います。