先日、札幌で行われた「G7 気候・エネルギー・環境大臣会合」。その歓迎レセプションで、右半身にまひの障害がある左手のフルート奏者が喝采を浴びました。

 今月14日、札幌市中央区のホテルで開かれたG7の歓迎レセプション。

 近くの控え室では、畠中秀幸(はたけなか ひでゆき)さんと札幌南高校の生徒たちが身支度を整えていました。静かな興奮と緊張が漂います。

G7歓迎レセプションに向け準備をする札幌南高校書道部

 その1か月前。畠中さんは、伴奏するピアニストの小川紗綾佳(おがわ さやか)さんと現場の下見に訪れていました。音の響きを確認します。

(フルートの音色)
畠中秀幸さんと小川紗綾佳さん
「思ったより響きますね」「そうですね」

 畠中さんは、右半身にまひがあり、左手でフルートを演奏します。

 3月下旬に完成したばかりのお寺。畠中さんには、建築家というもう一つの顔が。

畠中秀幸さん
「こちらが本堂になります、無垢材の部分がいわゆる宮大工さんに作って頂いた部分で、木曽ヒノキを使っています、その上とか周りについては、現代工法で作っているので、宮大工が作った古い工法と新しい工法が手を携えて一つの建築を作って居るというのが新しい考え方かなと思っています」

惠弘寺 足立隆厳住職
「お寺って本当は、凜としたというかきちんとした形…そこは昔の建築を取り入れて下さいということで、それ以外のところは、来た人が楽しくなるような気軽に「こんちわ!」って入れるような感じのお寺を作りたいというのを畠中さんの方にずっとお願いしていたんですよね。」
「(叶いましたか?)叶いました!」

フルート奏者で建築家の畠中秀幸さんと惠弘寺足立隆厳住職

 畠中さんの仕事場を兼ねた自宅。12年前、脳卒中により右半身マヒとなった畠中さんは今、フルートと同様、設計図を描くのも左手です。

畠中秀幸さん
「いつもはこんなんで、一時間位やると、飽きてくると、休むんじゃなくて、楽器吹きに、で、楽器吹くと、オレ飽き性だから30分位吹くと体が疲れて、マヒがひどくなるので、そしたらまたこっち来て…演奏している時に建築思いついちゃったりするんですよ」

 障害を乗り越え、左手だけで演奏できるフルートを手に入れた畠中さんは、マヒが無い方の肺と呼吸で演奏する方法を研究。

畠中秀幸さん

 去年の夏、キタラで復活コンサートを開きました。そしてこの春、G7レセプションでの演奏依頼が舞い込んだのです。

畠中秀幸さん
「正直びっくりしましたけど、有り難いなと思って、環境大臣の皆さんの集まりだというのが非常に面白くて、その建築も音楽も環境だったりするので…」

 そんな畠山さんと共演するのが、札幌南高校書道部。

 13年前からスポーツイベントや公式行事などでダイナミックな書道パフォーマンスを披露しています。

部員の衛藤さん(2年)
「(G7に登場すると聞いてどうだった?)すっごいびっくりしました、とにかく」

部員の加島さん(2年)
「本当に驚きました、けど…なんか不安もあって…」

書道部部長の大塚亜美さん(3年)
「G7ですから、一発本番なので、一番闘うべきは〝緊張〟になります、練習でできても、本番で失敗しては、意味がないので」
「(部員に向け)次の練習からはかま着るので持って来て下さい!」

 本番2日前、最終リハーサルが行われました。

 フルートの畠中さんとピアニストの小川さんも参加。書道部の皆さんも本場さながらの袴姿。

畠中さんの演奏に合わせてパフォーマンスをする札幌南高校書道部

 畠中秀幸さん
「最終的には、障害を負ってる負ってないというのは関係無い話なので、健常者と障がい者の循環みたいなものを作る…というのをもしかしたらできる…かもしれないですよね、僕が障がい者として出て行くことによって、そういう意味での環境…論みたいなことが一つのきっかけ…考えて頂くきっかけになると嬉しいなと思います」

 札幌南高の生徒達が書いたのが、こちらの書です。

 金体文字(きんたいもじ)といって、古い時代の象形文字。

 これは「鳥」、こちらが「木」を表しています。未来に残したい自然の風景の中、鳥たちが飛び立つ様子をモチーフにしたそうです。