KAZUⅠは、事故のわずか3日前、国の検査を代行するJCI=日本小型船舶検査機構が行なった中間検査に合格していました。


 その際、JCIは、ハッチの動作は確認せず、浸水の原因となったハッチの不備は、見逃されました。

 また、故障していた衛星電話の代わりに、現場付近ではほとんど圏外のキャリアの携帯電話への変更も認めていました。


斉藤鉄夫 国交大臣(去年4月28日の会見)
「私が第一に感じたのは当事者意識の欠如、責任感の欠如だと思います。責任者として、当事者として誠意を持って(桂田社長に)御家族の皆さまへ説明してほしいと指導していきたいと思っています」

 当事者意識、責任感が欠如していたのは、所管するJCIだけでなく、国もまた同じでした。

 KAZUⅠは、事故の10か月ほど前、予兆ともいえる2つの事故を起こしていました。

 おととし5月、海面に浮いたロープと接触して乗客3人がけが。

 翌6月にも、浅瀬に乗り上げる事故を起こしていたのです。

 知床遊覧船は、その前の年までに、経験豊富な元船長や乗組員など5人を退職させていました。


元KAZUⅠ船長
「社長からですね。桂田精一から。コロナの影響で集客が見込めないので、とりあえず来ないでくれと、だから僕らが持っていたノウハウっていうのを、彼らには引き継いでいなかった」

 一方で、経験の浅い3人を新たに船長として雇用。

 
 その1人が、沈没事故を起こした豊田徳幸(とよだ・のりゆき)船長でした。

元KAZUⅠ船長
「何も知らない船長を新たに雇ったところで知床のことを知らないわけだから。船の操船にしても、状況判断にしても…、やっぱりやっちゃったかって…」