私鉄担当者「なぜ“介護者同伴”でなければいけないかわからない」

では、この謎ルールを設けている各鉄道会社はどう答えるのだろうか。
首都圏の私鉄各社に取材をすると…。

ある私鉄の担当者
「古い規則なので、なぜ“介護者同伴”でなければいけないかはわからない

別の私鉄の担当者
旧国鉄時代の障害者割引制度を踏襲し、現在でも運用しているのだと思う
「正直、私も個人的には障害者一人での利用でも割引されるべきだと思っているが、規則だからどうしようもない」

私鉄の担当者でさえ、「なぜ介護者同伴でなければいけないかわからない」という。

どうやら、各私鉄は旧国鉄の規則を踏襲し、障害者割引制度を設けているらしい。
ということで、JR東日本にも聞いてみた。

JR東日本の担当者
「昭和24年12月、「身体障害者福祉法」が制定されたことに伴い、当時の「国有鉄道運賃法」についても改正がなされ、昭和25年2月から(障害者)割引が実施されました」

介護者を伴わなければ旅行できない障害者について、二人分の運賃を実質的に一人分に割引くことで経済的な負担を軽減しようという考えだったという。
およそ70年前の規則を現在もJRや各私鉄が運用しているのだ。

時代は進んで、駅等のバリアフリー化も進み、一人で行動できる障害者も増えている。
JRは障害者一人での利用でも割引を適用する考えはあるのだろうか。

JR東日本の担当者
「身体障害者割引をはじめとする公共割引は、国の社会福祉政策で行われるべきものと考えております。国鉄の制度を継承したものは、引継ぎ継続して実施いたしておりますが、割引の拡大については、ひいては他のお客さまのご負担増にもつながるため、現在のところ考えておりません」

“障害者割引は国の政策で行われるべき”
JR東日本への取材を通して、障害者割引という公共性の高い制度が営利企業でもある各鉄道会社の負担の上に成り立っていることに気付かされた。障害者割引を拡大するには、その負担を誰がするのかの議論が必要ではないのか。

当たり前のこととして、あまり深く考えてこなかった鉄道における障害者割引。
ここまで取材を進めて、“そもそも、なぜ障害者割引はあるのか”という根本的な問いにたどり着いた。それを考えることが、障害者割引を誰が負担するのかという問題への答えになるかもしれないからだ。