“トー横”が唯一の居場所 売春をしながら、日々の生活

翌日、Aさんの姿は原宿にあった。
―原宿のどういうところが好き?
Aさん
「かわいいものいっぱいあるし、派手なものが好きだから」
―よく行く店とか行きたい店とかは?
「特にないけど、ぱっと外を見て、いいなあと思ったら入ったりはする」
トー横で知り合った仲間と普段はどんな会話をしているのか。
「一番多いのは普通だけど恋愛話とか、今好きな人がいるんだけど、こういう状況なんだよねとか。修学旅行で夜、消灯時間が過ぎて話すみたいな」
―昔、そういう体験をあまりしてこなかった?
「してこなった」
―もしトー横がなくなったら?
「自分は今のところ、あそこ以外に居場所が見つけられていないから、無くなったら、どこも行く場所ないかな」
“トー横”が唯一の居場所だという。売春をしながら日々の生活を送っている。

Aさん
「この後、稼ぎに行く」
―それはいわゆる案件(=売春)?
「うん」
―非常に危険だと分かっていると思うけど、それでも行くの?
「うん」
――やめた方がいいんじゃないか
「やめたらお金ないから。ホテルも入れないし、ごはんも食べられないし。だから自分は行く。誰が止めても自分はそれで稼ぐ」
何度説得しても、Aさんは拒んだ。
「需要と供給じゃないけど、おじさんはお金を払ってそういう行為がしたい、こっちはお金がほしいからそういう行為をする、それでいいと思う」
―本当にそれでいいと思っている?
「うん」
―心の底から?
「うん、自分は今それしか稼ぐ方法がないし」

―将来ネイリストになりたいと言っていた。その気持ちは?
「もう無くなった」
―もう無いの?なんで?
「まあ染まったっていうか。2か月前までは、元々いた普通の生活の場所の感覚が残っていたけど、今はもう、それが全部ないかなって。てか、10年20年先まで、そんな考えられない。明日ですら考えられない、何があるか分からない状況で、今日をとりあえず頑張って生きているって状況だから」
そう言い残して、Aさんは私たちの前から去って行った。