ウクライナ東部のドンバス地方の解放を目指すロシア。一方、アメリカ側は「ロシアは目標の達成に向け長期的な紛争の準備をしている」としています。攻防の激しいウクライナ東部ですが、一部でウクライナの巻き返しが見られる地域もあります。専門家は、今後の戦況を変化させるポイントとして『ロシア側からの補給路をどう断つか。断つことができるか。』だとしています。その他、核兵器使用の可能性などについて、専門家にききました。

■『ロシアの補給路をどう断つか?』 ロシア長期的な紛争準備か

山内あゆアナウンサー:
ロシア軍の苦戦が伝えられているウクライナの東部ですが、ある分析では、プーチ
ン大統領はさらに支配地域を拡大させたいのではないかと分析しています。



まずは現在の状況から地図で見ていきます。北東部、ハルキウは、ウクライナ第2の都市です。ハルキウについて、ウクライナ・ゼレンスキー大統領は「ロシア軍は徐々にハルキウから排除されている」「ハルキウ周辺の複数の村を奪還した」と主張しています。

また、マリウポリについて。ここは製鉄所がある町です。マリウポリの市議会議員がSNS上で「11日にロシア軍が製鉄所に化学兵器を使う準備をしている」と主張しました。根拠ははっきりしていませんが、もし本当だとすれば大変心配なことです。

東部のドンバス地方、さらには、クリミア半島に繋がる南東部のマリウポリからヘルソンなどは、親ロシア派の多い地域です。アメリカの国防総省高官は、プーチン大統領について、この東部ドンバス地方とウクライナ南部では「成し遂げたかった野望を何一つ手に入れられていない」「我々の分析では、2週間かそれ以上、当初の想定より遅れている」のではないかということです。



南部の都市、オデーサは観光都市として大変美しい町です。ここでもまた攻撃がありました。ミサイル攻撃によって観光施設やショッピングセンターなどが破壊されました。民間人1人が死亡し、7人が負傷したとウクライナ側は伝えています。

そもそもプーチン大統領がウクライナを侵攻する時の口実というのは「東部ドンバス地方の解放が目的だ」とし、軍事作戦を開始させました。ただアメリカのヘインズ国家情報長官は「東部ドンバスにとどまらない目標の達成に向け、長期的な紛争の準備をしている。モルドバの“親ロシア派支配地域”まで支配を伸ばしたいと考えている」と話しました。隣国のモルドバはウクライナの南側、ちょうど国境の辺りを親ロシア派が支配しているということです。

ホラン千秋キャスター:
モルドバが巻き込まれる可能性については、どうご覧になっていますか?

笹川平和財団 畔蒜泰助 主任研究員:
おそらく今のロシア軍の状況から考えると、やはり東部に戦力を集中させるというのが一番合理的な流れだと思います。ただ、今その東部も必ずしもうまくいってないという中で、おそらく散発的に、オデーサにミサイルを撃ち込んでいるということなんだと思います。ただこれではこの地域を奪還・支配することはおそらくできないです。ロシア側が要するに長期的な考えを持っている可能性は十分にありますけども、これは短期的に実現するという可能性もあまりないということだと思います。

ホランキャスター:
ロシアは苦戦していると伝えられてはいるんですけれども、ロシアが制圧したとみられる地域が大きく後退しているわけではないと考えますと、この苦戦というのは私達はどのように捉えるのがいいのでしょうか?



畔蒜 主任研究員:
ハルキウの奪還地域が仮にロシア国境まで達すると、非常に大きな戦局の転換になると思います。というのは、このドンバス地域では今、イジュームから下にロシア軍は降りていってるわけですけども、ロシア領から補給路が出ています。ですから、そこの補給路をウクライナ側が完全に断つことになるので、そこが今後どうなるかというのが大きな境目になるということだと思いますね。



井上貴博キャスター:
欧米側のシナリオについても伺いたいのですが、戦争が長期化、泥沼化しています。その中で、プーチン政権を倒すというシナリオをどうやって欧米側は描いているのでしょうか。経済制裁だけで倒せると考えているのか、国内で翻意するような動きを待とうとしているのか、どんなシナリオなんですか。

畔蒜 主任研究員:
おそらく西側は、少なくとも特にアメリカに関してはウクライナの戦局において「ウクライナに負けさせない」というのが現時点での一番の優先の目標というか、戦略目標なんだと思います。一方で、ロシアが逆にウクライナにおいて、明らかにこれはもう負けだというような状況にまでいってしまうと、逆にロシアは次に何をしてくるのかというのが、また怖い展開になってくると。この辺が非常に難しいところなんだと思うんですね。現時点で、経済制裁でロシアの今の政権が倒れるという状況まではまだ思い描けてないということだと思います。