大阪地検幹部「法に則って粛々と…」

一般に、逆送された人について、検察は原則として起訴としている。4月28日、大阪地検は、男らをいずれも強盗致死罪で起訴した上で、2人の実名を発表した。殺意があったとされ強盗殺人で家裁に送致されたのち、家裁が「強盗致死罪を適用すべき」とし、最終的に強盗致死罪で起訴された19歳の男。大阪地検は「関係証拠を踏まえて殺意の認定に至らなかった」と説明。そして、2人の実名を発表した理由について「本件は重大事案であり、地域社会に与える影響も深刻であることから、諸般の事情を考慮した」としている。

検察は実名発表に対してどういう考え方を持っているのか。複数の検察幹部を取材した。

(地検幹部A)
「我々は法に則り粛々と。(総じて、実名が発表された特定少年に与える)影響も2年3年で出る話ではないですから」

(地検幹部B)
「最高検から各高検、地検に通達があった。それに基づいて実名を公表したということしか答えられない」

幹部が言う「通達」とは、今年2月、最高検察庁が全国の高等検察庁と地方検察庁に出したもの。特定少年が起訴された際に実名を公表する“基本的な考え方”を「特定少年の健全育成や更生を考慮してもなお社会の正当な関心に応えるという観点から検討すべき」とし、実名発表の際の基準の一例として「裁判員裁判」を挙げている。今回19歳と18歳の男が犯したとされる罪は強盗致死。裁判員裁判の対象となっていることから、大阪地検はあくまでも改正少年法と通達に従って報道機関に氏名を発表した。司法当局として法に則ってまさに粛々と、ということなのだろう。そして、発表されたものを実名で報じるかどうかの判断自体は各報道機関に委ねた。

少年事件に詳しい弁護士「制度そのものに疑問」

特定少年をめぐり、法制度と当局の対応が変わった中で、今一度話を聞きたい人がいた。大阪で少年事件を多く手掛ける土橋央征弁護士だ。土橋弁護士は、犯罪報道においては「匿名報道が原則であるべき」としたうえで、特定少年に位置付けられる男らの実名が大阪地検から発表されたことについてこう話した。

(土橋央征弁護士)
「法定刑が重たい、社会的に重たいとされている罪に関して、(実名を)広報するというのが検察庁の論理なんだろうなと理解はしていますけども、私としてはそれが妥当だとは思わないです。逆送されて起訴されたら実名になっていいという、そもそもこの法制度そのものに疑問を感じています。(Q“悪いことをしたら名前が出て当然だ”という意見も聞かれるが?)『推定無罪』という原則があり、有罪確定までは不利益を科されないとなっているのに、実名報道されることで、事実上社会的な罰が加えられてしまっているとみられます。(罪を犯した人が社会復帰しても)仕事ができなくなったら、またさらに再犯するリスクが高まる可能性は否定できないと思います。本当にそれで社会としていいのかというのは、私は問いたいと思います」